サンタクロースがやって来た ~試される民主主義と地方自治~ Vol.4
2021.03.11
VOL.04 人口減少から見える地域経済の行方 

 話は少しずれたが、前述のように人口減少は日本経済に大きな影を落とすことになる。

 人口減少は財政収入の減少の他、そのこと自体による需要の減少を招く。

 一方、人口が減少してもこれまでに整備してきたインフラの維持管理は残る。
 その結果、インフラの維持管理の負担は人口減少に反比例して増加する。

 事実、財政破綻で一躍脚光を浴びた夕張市でも、水道・下水道・ゴミ料金は倍増に近くなっている。
 これに加えて財政難から行政サービスは人手不足もあって、低下の一途を辿ることになる。

 また、公民館・図書館等は廃止・休止できても、上・下水道はそれができないので、住民負担は増えても減ることはない。
 道路の維持管理や老朽化したトンネルや橋の維持管理はどうするのであろうか。

 人口減少は需要の減少を招き、それが不動産価格の下落を招く。
 これにより税収は減り、行政サービスは更に低下し、住民負担を増大させる。

 その結果、市町村間の格差は拡大し、住民はより暮らしやすい町へ移動し、人口は更に減少する。
 残されるのは身寄りのない老人や、資力のない経済弱者ばかりとなり、地域経済は更に疲弊する。
 人口減少は地方自治体にとって治療法のないガンのようなものであり、自治体はやがて消滅することになる。
 そこに残るのはゴーストタウンである。

 読者のうち、都会にいる人はこのようなことを実感することはできないであろうと思われる。
 しかし、地方、特に過疎町村を行ったり来たりしている筆者にとっては、切実に感じるのである。
 2035年までは生きられないから考えても仕方ないと思う反面、子供達の将来はどうなるのかと、心配は尽きない。
 この国の不幸は、指導者がサンタクロースになりたがることである。

 もっとも、指導者にサンタクロースを期待する国民の方が問題ではあるが・・・。


(2009年11月 Evaluation no.35掲載/「サンタクロースがやって来た!!-試される民主主義と地方自治」)

2021.03.11 14:18 | 固定リンク | 鑑定雑感
サンタクロースがやって来た ~試される民主主義と地方自治~ Vol.3
2021.03.04
VOL.03 長期人口推計と日本経済の行方 

 人口問題研究所の長期人口推計に拠れば、2035年までに約1700万人(2005年比)の人口減少が予測されている。
 
 一人当たりの消費支出を年間 130万円とすると、約22兆円のGDPが消失することになる。
 合計特殊出生率は 1.3前後であるから、人口は確実に減る。
 
 2035年には、1805自治体のうち、人口5千人未満の自治体は5分の1以上になると予測されている。
 2030年から2035年にかけては約98%の自治体で人口が減少し、人口が20%以上減少する自治体は60%を超えるとされている。

 更に、生産年齢人口が40%以上減少する自治体は4割を超え、老年人口が50%以上増加する自治体はほぼ4分の1、老年人口の割合が40%を超える自治体は4割を超えるとされている。
 日本の将来を担う年少人口(14歳未満)の割合は10%未満となり、年少人口の割合が10%未満の自治体は約70%と著しく増加する。
 これを大雑把にいえば、国民の半分が税金で食べる人、半分が働いて税金を払う人ということになり、生産年齢人口一人が一人を扶養するということになる。
 はたしてそんなことが可能なのであろうか。

 もっと悲観的にいえば、実際に働けるのは18歳以上になるものと思われる他、公務員の人数を考慮するとおそらく国民4人で6人の国民を養うことになるのではないかと危惧される。

 つまり、日本経済はどう楽観的に考えても立ち行かないと結論づけるより他はない。

 戦前、大本営はどう考えても勝ち目のない戦争を始め、末期には誰もが戦争継続は無理と思うようになっているにもかかわらず、神国日本は不滅と強弁し、戦争に反対する者は非国民と非難し、それでも足りなくて特高警察を使って国民を追い回し、マスコミも大本営発表をタレ流し続け、国家指導部と一緒に国民を破滅の淵に追いやったのである。

 日本人は総認知症なのか、それとも忘れたフリをしているのか判らないが、敗戦に至るまでの全てのシステムを検証することなく一部の指導者と運の悪い幹部将校に責任を取らせてそれで良しとしたことを深く憂慮している。

 この点については大企業・国・自治体も同様で、問題が発生した時にシステムエラーと考えず、全て個人の責任に帰して終わらせている。

 その結果、最大犠牲点に到達するまでシステムが変更されることはない。

 最大犠牲点に到達すると、企業は破産・消滅し、国家は破綻する他はなく、同じ過ちを繰り返す。

 そう、歴史は繰り返すのである。

 我々はもっと歴史に学ばなくてはならない。
 歴史といっても、現在の歴史教育は単なる年表を暗記するだけで、さながらクイズの答えを覚えているだけで何の役にも立たない。

 歴史を学ぶとは、その時代の人間の生き方と社会のありようを学び、そこから現代の人間の生き方と社会のあり方を考えることであると思っている。
 個人的には、江戸時代以降、技術・道具は著しく進歩したが、その反面人間そのものの品格は著しく下落したと思っている。

2021.03.04 14:17 | 固定リンク | 鑑定雑感
サンタクロースがやって来た ~試される民主主義と地方自治~ Vol.2
2021.02.25
VOL.02 経済成長と拡大均衡の幻想 

 戦後経済の復興は目覚ましく、経済成長を支えるために財政規模は年々拡大してきた。
 経済成長はとどまることがないと信じていたので、いくら借金しても経済成長によって借金は必ず返せると思っていた。

 しかし、バブル崩壊後一転して経済は減速し、低成長時代に突入した。

 長期人口推計によっても分かるとおり、人口の現状維持はできない。

 一国の経済は、基本的に人口に依存している。
 人口が減少し、高齢化して労働人口も減る中で、経済成長が続くと予測するのは困難と思わざるを得ない。

 もっとも、そう考えるのは素人で、経済の専門家から見れば人口が半減しても今以上のGDPが確保される方法があるのかもしれない。

 もしそういう方法があるのであれば、国家再生の処方箋を是非書いて示してもらいたいと思うのは、筆者だけではあるまい。

 マスコミも、もう少し国・地方の財政状況の分析と対応についての息の長い、深い取材をして国民の前に明らかにして欲しいと願わざるを得ない。

 戦前の大本営発表のように、官製情報をタレ流し、国民を破滅への道へ追いやったことをマスコミは忘れないで欲しい。
 
 また、民主党も政権欲しさに国民に口当たりの良いことばかり言わないで、情報を開示して国民に財政難に対する覚悟と負担と責任の在り方を問うことを期待したい。


2021.02.25 14:16 | 固定リンク | 鑑定雑感

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