民間競売制度の導入を考える ~ Vol.3
2024.07.12
VOL.03 3.鑑定評価における技術とは何か

 鑑定評価において必要な技術とは一体どういうものなのであろうか。

鑑定評価に必要なのは判断力であり技術は必要はないのであろうか。
それともある程度の技術がなければ判断力は十全のものにならないのであろうか。

ここで鑑定評価に必要な技術とは一体何なのか考えてみたい。

鑑定評価は建築・土木・測量・化学・農業・林業等に関する技術的な知識の他に、法律解釈・判断という法技術的な側面、更には経済分析・市場分析等という経済分野に関する分析技術能力も必要とされる。

 ところが、試験科目はこれらの技術的能力や分析能力を問う構成にはなっていない。
 また、鑑定評価基準は般若心経の如く、いくら読んでもこれだけでは実際の鑑定評価はできない。

 つまり、基準はあくまでも考え方の基本理念を示したもので、実際の作業に即使用可能なマニュアルとはなっていない。
 したがって、各分野の専門的なことは机上で考えるだけである。

 一般的な特に文科系出身の不動産鑑定士には実際に設計したり測量したりする能力も経験もない。
 また、数学・統計学等を駆使して市場分析や経済分析する能力もない。
 但し、ごく一部ではあるが、これらの技術・能力を備えている人も見受けられるが、普通の鑑定事務所でこれらの技術的能力を身につけることは不可能に近い。
 私に出来ることはせいぜい講釈を垂れるだけで、実務能力はない。

 表面的には先生といって立ててくれるが、陰ではバカにされるだけである。
 まァ、時給千円から二千円程度にしかならない簡易鑑定ばかりやっている状態では無理からぬことではある。

 社会は冷徹なもので、不動産鑑定士の評価は鑑定報酬に具体的に表われている。
 日雇い人夫並み、いやそれ以下の報酬で働かされている不動産鑑定士の技術・能力は無きに等しく、評価に値しないということであろうか。

 話はそれてしまったが、個人的には評価に必要な技術というものを明確に意識したことはなく、また、これらについて実地に訓練されたこともない。
2024.07.12 09:06 | 固定リンク | 鑑定雑感
民間競売制度の導入を考える ~ Vol.2
2024.07.04
VOL.02 鑑定評価作業における技術的進歩


 鑑定評価作業をサポートする事務機器の進歩は目覚ましいものがある。

 30年位前までは評価書は手書きのものが多かった。
 ワープロが発明されてからはワープロによる評価書が主流となった。
 それでも当時は地価公示の評価書がワープロで作成されることに否定的であった。
 今考えればお笑いである。
 当時の国土庁も鑑定協会もトクトクと地価公示の評価書は手書きでなければダメだと言い張っていたのである。

 今はコンピュータである。

 早いしチェックもし易いとのことで、当時とは180度回転し、手書き評価書は厳禁である。
 当時、誰がこのような時代が来ると予想できたであろうか。

 人間とはかくもいい加減な存在であると思わざるを得ない。

 鑑定世界でなくとも、身近に例はある。

 それは法務局の図面である。

 20年位前までは図面のコピーは厳禁であった。
 当時としても、納得のいく合理的説明はなかった。
 図面はすべてトレーシングペーパー(懐かしい言葉である)を使用し、定規と鉛筆でなぞるのである。   
 補助者の重要な仕事である。
 私も法務局で要領良く図面をトレースすることに精を出した。
 短時間に大量の分筆図や建物図面をトレースするのは大変である。
 不器用な人では時間がかかりすぎるし、見落としも多く、何度も法務局に通うことになる。

 時代が変わり今はコピー機で一発であり、技術・経験は不要である。

 最近は更に進化し、インターネットにより法務局備付の地図をプリントアウトすることも可能となった。
 絶対に図面はコピーさせないと頑張った当時の法務省の役人の思考は、一体何だったのか。

 何時の時代でも、合理的な根拠も示さずダメダメと言っていた人間が、何時の間にかコロット前言を翻し、何事も無かったかのように行動していることを見るにつけ腹が立つ。

 話が横道にそれたが、反省のないところや失敗のないところに技術の革新はない。

 前述のように鑑定評価作業を取り巻く事務環境は技術の進歩のお陰で様変わりした。
 手書きタイプからコンピュータへ、算盤から電卓・コンピュータへ、手紙からFAX、FAXからメールへと変わったが、鑑定評価の本質的な部分で進歩と言える部分があったかと問われれば、疑問を呈せざるを得ない。

 もっとも私の能力のなさを棚に上げての話だが、周辺の状況を見ても、本質的な進歩の形跡は見られない。
2024.07.04 17:54 | 固定リンク | 鑑定雑感
民間競売制度の導入を考える ~ Vol.1
2024.06.28
VOL.01 民間競売制度研究会の改善策と司法競売の憂鬱

 法務省主導により、平成17年12月に第1回の競売制度研究会が開催された。

 その後、鋭意研究会が開催され、アメリカ・ヨーロッパの競売制度の調査を踏まえて平成19年秋には民間競売制度のあり方が示された。

 重複するため割愛するが、基本的にはこれまでの司法競売はそのまま温存し、民間競売の位置づけとしては司法競売の補完ないし選択肢の拡大を主張する案に傾いているが、その意味においては民間競売制度の導入を真っ向から反対することに大義名分は見当らない。

 民間競売制度導入反対論者の多くは、選択肢の多くなることに対する不安、司法競売制度に従事する人々の経済的不安(仕事が減るのではないか)あるいいは、ただ単に制度変更に対しての拒否反応等、色々あると思われるが、最大の本音としての反対理由は、多分経済的不安に対するものであろうと考える。

 かくいう筆者も、何故今制度改革をしなければならないのかという疑問を持つ一人である。

 かつて司法競売は処理件数の増大から停滞し、これに地価下落や評価書の不統一も手伝って経済界から機能不全の烙印を押され、世論のバッシングにあったことは記憶に新しい。

 しかし、処理体制の充実や評価書の標準化、売却物件のインターネット公開、地価動向の回復等が相まって、遅い・高い・解りにくい等の状態は改善されており、かつて機能不全と批判された司法競売の欠点は大都市部を中心に克服されていると考えても良いと思っている。

 このような状況の中では、司法競売の欠点が多いから民間競売へという論拠はその影が薄いものと言わざるを得ない。




2024.06.28 14:48 | 固定リンク | 鑑定雑感

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