評価替事務の今後のあり方を考える ~ Vol.1
2025.02.27
VOL.01 はじめに

 担保執行法制の改正については既に周知のことと思われるが、ここであらためて改正に至る経緯とその後の状況並びに今固定資産評価の問題は、つまるところ市町村の説明責任に尽きると思われる。

 しかし、前述したように土地評価当たっては複雑多岐にわたる行政法の問題の他、評価要因の選定やデータの精度管理等、一担当者の能力の限界を超える問題も少なくない。

 このような中で、各市町村が評価そのものを外部に委託する方向に行くのは仕方ないとしても、基本的な部分、つまり道路の管理、土地図面の整理、都市計画法・建築基準法等のルールの明確化・開示等の、評価の基本となる基礎的インフラ整備がなされないことには、何時までたってもミスはなくならない。  
     
 評価に完全を求めれば究極的には1筆実測・1筆鑑定となり、コスト的には破綻するほかはない。

 したがって、評価精度の向上にも限界があるということを認識する必要がある他、課税客体の全てについて毎年賦課期日現在の現況を把握するということにも自ずと限界があるということになる。

 過去の判例をみても、小さな点にミスがあっても全体として著しく合理性を欠かなければ適法と判断しているようであり、そうだとすれば、粗削りの公平が確保されていれば良いということになる。            
 
これらの点を踏まえ、納税者の視点・徴税コスト・課税事務量の軽減等の観点から固定資産評価のあり方・仕組みについて検討してみたい。
2025.02.27 09:16 | 固定リンク | 鑑定雑感
担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.10
2025.02.20
VOL.10 民間競売導入の前提条件と今後の動向

 以上を総合すると、現時点で想像できる条件は少なくとも次の二つは必須と考える。

  1.債務者・所有者・その他の利害関係人(賃借人等)が納得して協力してくれること。
  2.配当計算が不要な物件であること。

 1の条件がクリアーできなければ、結局執行官にお願いする他はない。

 2の条件は、土地・建物の抵当権が同一の債権者であることを意味する。
 もし異なる抵当権があれば、配当計算という問題が生ずるため、現況調査と評価人による評価は必須となる。

 つまり、配当計算のために内訳価格の評価が必要となるからである。

 民間競売で評価するとなれば、評価基準や評価人の教育訓練が必要となるが、そんなことに時間をかける位であれば、現行の司法競売でも十分ということになる。

 したがって、民間競売で対応できる案件は極めて少なくなるものと思われ、法改正の実効性に疑問が残る。

 ところで、先の二つの条件が整っている物件は、現在でも司法競売ではなく任意に売却されている。

 つまり民間競売にすぐに移行できるような物件は、裁判所の手を煩わすことがないということである。

 昨今の競売事件の減少をみるにつけ、世の中は既に民間競売にできるものは民間競売に移行しているということを実感せざるを得ない。

 申立から売却までに半年から1年で、しかも90%超が売れているということを考えると、民事執行法を改正して民間競売制度を導入する必要性を感じることはできない。

 個人的には民間競売を否定するものではないが、不動産の取り扱いや金融制度・文化等の相異から、先に述べたように必ずしも日本になじまないものと思われる。

 仮に導入するとしても、関連法整備の煩わしさや実効性等を勘案すると、結局のところ労多くして効少なしというところに落ち着くのではないかと考える。

 以上、筆者の乏しい知識で思いつくまま述べたため、的外れのところも多々あると思われるが、司法競売の現場で伸吟している評価人の愚痴としてご容赦を乞い願うものである。
 

(2006年8月 Evaluation22/「担保執行法制の改正と競売の今後の動向」)

2025.02.20 10:23 | 固定リンク | 鑑定雑感
担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.9
2025.02.13
VOL.09 民間競売について

 昨今、不動産の民間競売(ネットオークション)が浸透しつつある。

 確かに売りたい人にとって相対取引よりは市場が広がり、納得の行く価格で売却される可能性は高い。

 売却上の問題点(法律上の問題点や土地・建物の物的問題点等)がクリアーされていれば、ネットオークションはその力を発揮する。

 しかし、物件の調査やリスク情報の開示が不十分であれば、オークションに参加する者の競落上のリスクは増大する。

 現在行われている民間競売が機能しているのは、販売の手段として機能しているだけで、販売後の瑕疵担保責任や引渡し、融資その他諸々の問題は基本的に当事者間で解決可能だからと思われる。

 担保権実行の一つの手段として民間競売を考えると、そこには大きなハードルがいくつも待ち構えているような気がする。

 まず第一に、債務者・所有者に調査する費用はない。

 第二に調査に協力してくれるという保証もない。(法改正して強制調査が可能となれば別だが、司法競売でも調査非協力の場合は難儀しているのに民間に強大な調査権を付与できるかどうかは疑問である)

 第三に、抵当権が相互に入れ違っている場合には配当計算ができない。
 もっとも、法律で計算ルールを作れば良いが、現在でも法律上のルールはないのに民間競売のためにそこまでするかどうかは大いに疑問がある。

 第四に、民間競売の主体に誰がなるのかである。
 多分サービサー等が民間競売の担い手として一番近いものと考えられるが、債務者・所有者の協力の得られない物件をどう調査するのか、それとも調査せずに単に売るだけなのか、また売却手数料や調査料は誰がどう決めるのか、それともそれさえ民間競売で好きなようにやれというのか等の問題がある。

 日本人の感覚としては、担保権実行のようなトラブル案件は、司法の力を借りた方が利害関係者の納得性が高い。

 「規制改革・民間開放推進3ヵ年計画」の言葉を借りれば、司法競売はあいも変らず競売費用が高くて遅いということになるが、民間競売のハードルの高さを考えれば、必ずしもそうとは言えないことになる。

 また、安くて早くても雑であれば問題は更に拡散する。
2025.02.13 09:36 | 固定リンク | 鑑定雑感
担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.8
2025.02.06
VOL.08 不動産担保金融制度の相異

 アメリカでは、不動産金融はノンリコースが一般的であり、支払不能となった場合は抵当不動産を手放すだけで債権債務の関係は解消され、敗者復活は容易である。

 これに対し、日本の不動産は一部の物件にノンリコース型の担保金融がみられるものの、大半はリコース型で、更に悪名高い連帯保証が付帯されるため、意思に反して売却に付される債務者・所有者の抵抗は大きい。

 しかも、残債も追及されるため債務者・所有者の一家離散・自殺・夜逃等も多く見られ、敗者復活の道のりは暗くて遠い。

 競売制度は一国の不動産のあり様や歴史・文化・金融制度等と密接不可分と考えられる。

 特に地方圏ではその傾向が強く、ただ単に売れば良いという単純な構造にはなっていない。

 現在においても債務者・所有者に対する気配りは欠かせず、現場調査における執行官の気苦労は計り知れず、評価人も同様の気苦労を負っている。

 支払不能となったら競売でロクに調査もせず、適当にパッパッと売却できるのであれば苦労はない。

 競売制度と金融制度は車の両輪であることから、是非金融制度との関連についても研究してもらいたいものである。
2025.02.06 09:23 | 固定リンク | 鑑定雑感

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