担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.3
2024.12.19
VOL.03 競売物件の内覧について

競売物件が売れないのは、物件の中を見れないからという理由が大勢を占め、平成16年4月から競売物件の内覧が実施された。

 しかしながら、競売物件の中が見られないから売れないという論理は、実は何の根拠もなかったということが昨今の売却率が証明している。

 法改正前の平成14年以降の競売物件の売却率は既に都市部で80%を超えており、昨今は90%を越えているところもある。
 全国平均でも60%を超え、70%になろうとしている。

 このような中で内覧が実施されたが、内覧実施件数は全国的にみても極めて少ない。
 競売申立件数の割合からすると、無いに等しい状況にある。

 これらの状況をみると、競売物件が売れなかったのは内覧できるかどうかとは無関係だったことが解る。

 内覧は債権者の申立てによりなされるが、債務者・所有者・賃借人等のプライバシー保護の問題や、内覧希望者が多数いる場合の対応等の問題からその要件は厳しく、その為に実施件数が少なかったのではという見方もあるが、実態は売却率が高いので債権者が内覧の必要性を感じておらず、そのため内覧の申立てをしなかったということに尽きるものと思われる。

 内覧実施の為に万全の体制を準備していた執行裁判所・執行官にすれば、肩すかしもいいところである。
 例外的なごく少数の内覧希望者の為に、多大の時間と費用をかけ改正したが、大山鳴動ネズミ一匹の結果となった。
2024.12.19 14:53 | 固定リンク | 鑑定雑感
担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.2
2024.12.12
VOL.02 短期賃借権保護の廃止


前記の改革のうち、まず民法 395条が改正され、短期賃借権の保護制度が廃止された。

 これに変って明渡猶予制度が設けられ、平成16年4月1日から施行されたため、これ以降の競売事件については原則として短期賃借権は保護されないこととなった。

 したがって、競落人は短期賃借権を引き受けることが原則ないので、これまでのような短期賃借権の負担による減価を評価上考慮することはなくなった。


 ところで、この改正によって何が変ったかは良く解らない。


 確かに短期賃借権保護制度による悪質な執行妨害は世間を賑したが、実務者の立場からみればホンの一部の問題であったように思えてならない。

 死刑制度があってもほとんど毎週のように殺人事件が発生している現状をみると、死刑制度は全くと言って良い程殺人の抑止力とはなっていない。

 いくら法改正をしても、法を守る気のない人に向っては馬の耳に念仏である。

 短期賃借権保護の廃止による一番の被害者は、一般市民である。

 今のところ社会を賑す大きな問題とはなっていないが、転居先のない賃借人である田舎の老人は、明渡猶予期間の6ヶ月を過ぎると真冬でも家から放り出されることになる。

 ごく一部の不心得者のために法改正を行なった訳であるが、このことによって経済的弱者である賃借人たる一般市民が路頭に迷わないことを祈るだけである。

 一説によれば、この改正を利用して老朽アパートやビルの建替を意図している輩がいるとのことである。

 抵当権者と所有者が手を組めば、立退きに反対する賃借人を何の保証もなく追い出すことが可能となる。

 改正民法 395条が賃借人の追い出しのために悪用されることがないという保証はない。
2024.12.12 13:25 | 固定リンク | 鑑定雑感

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