民間競売制度の導入を考える ~ Vol.7
2024.08.08
VOL.07 差押時における現況確定
民事執行法上は、差押時において差押不動産に係る物的・法的関係を全て確定しなければならないとされている。
土地における物的な関係では、地番・地目・地積・道路・供給処理施設等、建物では所在位置・家屋番号・床面積・増改築の有無等が挙げられる。
公法的な関係では、土地・建物に共通するものとして不動産に関する行政法上の制限・許認可の有無・違反の有無等の他、私法上の問題としては民法・借地借家法等があり、抵当権設定時と差押時の権利の異動の他、法定地上権の成否・有益費・必要費等の確認、附属建物の有無、抵当権の効力の及ぶ範囲の確認・確定等、民事執行法に例示されていない現況の確定作業は数多くある。
これらの事項を限られた時間と費用で全て確定させるのは至難の業である。
更に厄介なのは、広大な山林のように範囲や現況の確認が物理的に不可能なものはどうするのか、また、農地については現況地目イコール農業委員会の認定地目とならない場合があり、この場合どう取扱うのか。
因みに、不動産登記法では、地目は一部に相異があっても全体として判断せよとなっているが、民事執行法における現況地目の判定は、不動産登記法に準拠するということにはなっていない。
したがって、広大な牧場に厩舎が一棟でもあれば、現況地目は牧場一部宅地と表示することになり、法定地上権の成否も検討しなければならないことになるが、本当にこれで良いのか今もって解らない。
いずれにしても、抵当権設定時から長いもので20数年も経過してから、設定時と差押時の状況を確定・精査し、その上で抵当権者に対抗可能な権利関係等が発生しているのかどうか、抵当物の価値に影響を及ぼす物的・法的状況があるのかどうかを確定するのは、大変な作業となる。
また、このような物件は地方に多く存在し、処理時間や売却率に大きな差が生ずる原因となっているが、都会にいる人がこれらを実感することは難しい。
民事執行法上は、差押時において差押不動産に係る物的・法的関係を全て確定しなければならないとされている。
土地における物的な関係では、地番・地目・地積・道路・供給処理施設等、建物では所在位置・家屋番号・床面積・増改築の有無等が挙げられる。
公法的な関係では、土地・建物に共通するものとして不動産に関する行政法上の制限・許認可の有無・違反の有無等の他、私法上の問題としては民法・借地借家法等があり、抵当権設定時と差押時の権利の異動の他、法定地上権の成否・有益費・必要費等の確認、附属建物の有無、抵当権の効力の及ぶ範囲の確認・確定等、民事執行法に例示されていない現況の確定作業は数多くある。
これらの事項を限られた時間と費用で全て確定させるのは至難の業である。
更に厄介なのは、広大な山林のように範囲や現況の確認が物理的に不可能なものはどうするのか、また、農地については現況地目イコール農業委員会の認定地目とならない場合があり、この場合どう取扱うのか。
因みに、不動産登記法では、地目は一部に相異があっても全体として判断せよとなっているが、民事執行法における現況地目の判定は、不動産登記法に準拠するということにはなっていない。
したがって、広大な牧場に厩舎が一棟でもあれば、現況地目は牧場一部宅地と表示することになり、法定地上権の成否も検討しなければならないことになるが、本当にこれで良いのか今もって解らない。
いずれにしても、抵当権設定時から長いもので20数年も経過してから、設定時と差押時の状況を確定・精査し、その上で抵当権者に対抗可能な権利関係等が発生しているのかどうか、抵当物の価値に影響を及ぼす物的・法的状況があるのかどうかを確定するのは、大変な作業となる。
また、このような物件は地方に多く存在し、処理時間や売却率に大きな差が生ずる原因となっているが、都会にいる人がこれらを実感することは難しい。
民間競売制度の導入を考える ~ Vol.6
2024.08.01
VOL.06 現況主義について
競売評価は、差押え時の現状に基づいて評価しなければならないとされており、評価条件を付すことができない。
ところで、差押え時の不動産の現況の確定とは、一体何をどこまで確定すれば良いのかは判然としない。
民事執行法では、評価書の記載内容として不動産の所在する場所の環境の概要、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限の有無、内容又、土地については地積、建物については床面積・種類・構造等が例示されているが、評価人は何をどこまで調査・確定しなければならないかは何も規定していない。
宅地建物取引業法では、法第35条において重要事項の説明義務を明示しており、その内容も詳細に規定している。
民事執行法ではこのような詳細な規定がないため、例示されている基本的な事項は別にして、調査事項の範囲・内容等の確認は評価人によって様々である。
その為、誤解を生ずることも少なくない。
また、調査・説明範囲が明定されていないため、物件によっては与えられた時間内ではどうしても調査を終えることができない場合が出てくる。
他方、調査事項が明定されていないため、基本的な部分のみの調査で終わらせても、執行裁判所はそれが十分な調査を踏まえたものであるかどうかを確認することはできない。
したがって、確認不十分なまま売却され、競落人が改めて調査した結果重大なミスが発見されることもある。
話はやや逸れてしまったが、評価書の記載内容の例示はあるが、現況の確定とは何かについてはもっぱら解釈論に委ねられている。
判例によれば、厳格な現況確定を期待しているものから、時間と費用が限られているのであるからその範囲内での現況確定で良しとするものまで、見解は必ずしも統一的ではない。
これらの問題が物件の確定作業の長期化につながり、早期処分の足かせになっていることは否定できない。
競売評価は、差押え時の現状に基づいて評価しなければならないとされており、評価条件を付すことができない。
ところで、差押え時の不動産の現況の確定とは、一体何をどこまで確定すれば良いのかは判然としない。
民事執行法では、評価書の記載内容として不動産の所在する場所の環境の概要、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限の有無、内容又、土地については地積、建物については床面積・種類・構造等が例示されているが、評価人は何をどこまで調査・確定しなければならないかは何も規定していない。
宅地建物取引業法では、法第35条において重要事項の説明義務を明示しており、その内容も詳細に規定している。
民事執行法ではこのような詳細な規定がないため、例示されている基本的な事項は別にして、調査事項の範囲・内容等の確認は評価人によって様々である。
その為、誤解を生ずることも少なくない。
また、調査・説明範囲が明定されていないため、物件によっては与えられた時間内ではどうしても調査を終えることができない場合が出てくる。
他方、調査事項が明定されていないため、基本的な部分のみの調査で終わらせても、執行裁判所はそれが十分な調査を踏まえたものであるかどうかを確認することはできない。
したがって、確認不十分なまま売却され、競落人が改めて調査した結果重大なミスが発見されることもある。
話はやや逸れてしまったが、評価書の記載内容の例示はあるが、現況の確定とは何かについてはもっぱら解釈論に委ねられている。
判例によれば、厳格な現況確定を期待しているものから、時間と費用が限られているのであるからその範囲内での現況確定で良しとするものまで、見解は必ずしも統一的ではない。
これらの問題が物件の確定作業の長期化につながり、早期処分の足かせになっていることは否定できない。
民間競売制度の導入を考える ~ Vol.5
2024.07.25
VOL.05 評価人の法的位置づけと責任
前述したように、民事執行法上は評価人を選任して評価を命じなければならないとされているだけで、評価人の法律上の身分は判然としない。
不十分ながら調査権も付与されているのであるから、公務員に準じて取扱われるべきものと考えるが、評価ミス・調査ミスをめぐる損害賠償請求事件の判例をみると、一体評価人はどういう立場の人間であるのか訳が解らなくなるのである。
執行官のミスは国家賠償の対象となる(身分がハッキリしている)のに、執行官と同じく命令に従い、時には執行裁判所の指導に従って評価を行なった評価人がミスを犯せば民事訴訟の対象となるのでは、法律上の均衡を著しく失しているものと考えざるを得ない。
仮に、評価命令によって行なった評価が民事訴訟の対象となるのであれば、評価命令の法的性質は単なる請負契約の一形態と考えざるを得ない。
しかしながら、業務の性質や量に関係なく一方的に日限を区切り、報酬も示さず、更には調査・評価の範囲や限界も示さず、謝絶の自由もままならないこのような業務が請負契約であると考える人はまずいないであろう。
評価命令は一方的で、受諾の意志を問わないのであるから、個人的には私的契約ではないと考えざるを得ない。
尚、過去の判例をみると評価人のミスは国家賠償の対象となるとする判例から、ならないとする判例まで両極端であり、現場の裁判官も混乱している。
評価人の法的身分は今もって不安定である。評価人として業務を行ない、不動産鑑定士として責任を問うのであれば、最初から不動産鑑定法の枠内で評価業務を行なわせるべきではないかと思わざるを得ない。
前述したように、民事執行法上は評価人を選任して評価を命じなければならないとされているだけで、評価人の法律上の身分は判然としない。
不十分ながら調査権も付与されているのであるから、公務員に準じて取扱われるべきものと考えるが、評価ミス・調査ミスをめぐる損害賠償請求事件の判例をみると、一体評価人はどういう立場の人間であるのか訳が解らなくなるのである。
執行官のミスは国家賠償の対象となる(身分がハッキリしている)のに、執行官と同じく命令に従い、時には執行裁判所の指導に従って評価を行なった評価人がミスを犯せば民事訴訟の対象となるのでは、法律上の均衡を著しく失しているものと考えざるを得ない。
仮に、評価命令によって行なった評価が民事訴訟の対象となるのであれば、評価命令の法的性質は単なる請負契約の一形態と考えざるを得ない。
しかしながら、業務の性質や量に関係なく一方的に日限を区切り、報酬も示さず、更には調査・評価の範囲や限界も示さず、謝絶の自由もままならないこのような業務が請負契約であると考える人はまずいないであろう。
評価命令は一方的で、受諾の意志を問わないのであるから、個人的には私的契約ではないと考えざるを得ない。
尚、過去の判例をみると評価人のミスは国家賠償の対象となるとする判例から、ならないとする判例まで両極端であり、現場の裁判官も混乱している。
評価人の法的身分は今もって不安定である。評価人として業務を行ない、不動産鑑定士として責任を問うのであれば、最初から不動産鑑定法の枠内で評価業務を行なわせるべきではないかと思わざるを得ない。