民間競売制度の導入を考える ~ Vol.2
2024.07.04
VOL.02 競売制度研究会における二次案とこれを巡る争点
研究会からA案~D案の四案が示されている。
各案の詳細については他の論文に譲るが、骨子はA案~C案は司法競売をベースとしている為、司法競売の補完ないし選択肢の拡大という本来の目的からすれば現行の司法競売と大同小異と言わざるを得ない。
また、この案では、わざわざ民間競売と称する合理的理由も見当らない。
本音を言わせてもらえば、A案~C案では現行の司法競売と本質的に大差はなく、この案を主張するならいっそ民間競売反対論の方が説得力があるように思えてならない。
D案は、「規制改革・民間開放推進3ヶ年計画」の趣旨に則しており、本来的な民間競売の姿であると認めざるを得ない。
債務者・債権者の合意があればどう売却しても文句は言わないことが相互に保証されるのなら、双方にとってメリットはあるかもしれない。
研究会における議論は、制度論・法律論にまたがって細かな点についても検討されてはいるが、競売評価人として現場を担当する者からみれば、何となく違和感があって馴染めない点も多い。
研究会からA案~D案の四案が示されている。
各案の詳細については他の論文に譲るが、骨子はA案~C案は司法競売をベースとしている為、司法競売の補完ないし選択肢の拡大という本来の目的からすれば現行の司法競売と大同小異と言わざるを得ない。
また、この案では、わざわざ民間競売と称する合理的理由も見当らない。
本音を言わせてもらえば、A案~C案では現行の司法競売と本質的に大差はなく、この案を主張するならいっそ民間競売反対論の方が説得力があるように思えてならない。
D案は、「規制改革・民間開放推進3ヶ年計画」の趣旨に則しており、本来的な民間競売の姿であると認めざるを得ない。
債務者・債権者の合意があればどう売却しても文句は言わないことが相互に保証されるのなら、双方にとってメリットはあるかもしれない。
研究会における議論は、制度論・法律論にまたがって細かな点についても検討されてはいるが、競売評価人として現場を担当する者からみれば、何となく違和感があって馴染めない点も多い。
民間競売制度の導入を考える ~ Vol.1
2024.06.28
VOL.01 民間競売制度研究会の改善策と司法競売の憂鬱
法務省主導により、平成17年12月に第1回の競売制度研究会が開催された。
その後、鋭意研究会が開催され、アメリカ・ヨーロッパの競売制度の調査を踏まえて平成19年秋には民間競売制度のあり方が示された。
重複するため割愛するが、基本的にはこれまでの司法競売はそのまま温存し、民間競売の位置づけとしては司法競売の補完ないし選択肢の拡大を主張する案に傾いているが、その意味においては民間競売制度の導入を真っ向から反対することに大義名分は見当らない。
民間競売制度導入反対論者の多くは、選択肢の多くなることに対する不安、司法競売制度に従事する人々の経済的不安(仕事が減るのではないか)あるいいは、ただ単に制度変更に対しての拒否反応等、色々あると思われるが、最大の本音としての反対理由は、多分経済的不安に対するものであろうと考える。
かくいう筆者も、何故今制度改革をしなければならないのかという疑問を持つ一人である。
かつて司法競売は処理件数の増大から停滞し、これに地価下落や評価書の不統一も手伝って経済界から機能不全の烙印を押され、世論のバッシングにあったことは記憶に新しい。
しかし、処理体制の充実や評価書の標準化、売却物件のインターネット公開、地価動向の回復等が相まって、遅い・高い・解りにくい等の状態は改善されており、かつて機能不全と批判された司法競売の欠点は大都市部を中心に克服されていると考えても良いと思っている。
このような状況の中では、司法競売の欠点が多いから民間競売へという論拠はその影が薄いものと言わざるを得ない。
法務省主導により、平成17年12月に第1回の競売制度研究会が開催された。
その後、鋭意研究会が開催され、アメリカ・ヨーロッパの競売制度の調査を踏まえて平成19年秋には民間競売制度のあり方が示された。
重複するため割愛するが、基本的にはこれまでの司法競売はそのまま温存し、民間競売の位置づけとしては司法競売の補完ないし選択肢の拡大を主張する案に傾いているが、その意味においては民間競売制度の導入を真っ向から反対することに大義名分は見当らない。
民間競売制度導入反対論者の多くは、選択肢の多くなることに対する不安、司法競売制度に従事する人々の経済的不安(仕事が減るのではないか)あるいいは、ただ単に制度変更に対しての拒否反応等、色々あると思われるが、最大の本音としての反対理由は、多分経済的不安に対するものであろうと考える。
かくいう筆者も、何故今制度改革をしなければならないのかという疑問を持つ一人である。
かつて司法競売は処理件数の増大から停滞し、これに地価下落や評価書の不統一も手伝って経済界から機能不全の烙印を押され、世論のバッシングにあったことは記憶に新しい。
しかし、処理体制の充実や評価書の標準化、売却物件のインターネット公開、地価動向の回復等が相まって、遅い・高い・解りにくい等の状態は改善されており、かつて機能不全と批判された司法競売の欠点は大都市部を中心に克服されていると考えても良いと思っている。
このような状況の中では、司法競売の欠点が多いから民間競売へという論拠はその影が薄いものと言わざるを得ない。
不動産鑑定評価の今日的課題 ~ Vol.6
2024.06.20
VOL.06 それでも鑑定制度は動いている
少し自虐的な反省が続いたので、改めて現在の鑑定制度の果たしている役割について考えてみたい。
鑑定制度は、もともと公共用地の買収の問題を契機に誕生した経緯があると聞いている。
それが年々拡大し、相続税・固定資産税等の公的評価の他、証券化不動産・減損会計等の私的評価にも拡充され、日本経済は最早不動産鑑定士抜きには動かない状況となっている。
前述したように、現行の鑑定評価は確かに不備なところも多く、客観性に乏しい(非科学的?)と批判されてはいるが、それでは誰もが反論のしようがない科学的鑑定方法があるのかと言えば、残念ながらその方法を持ち合せてはいない。
したがって、いかなる批判を受けようとも、現行の鑑定制度に代る方法がない以上、我々は現在有している多様な技術や方法を駆使して日本経済にビルトインされた鑑定制度に対する社会の負託に応えなければならないものと考える。
そのためには、現行の鑑定評価方法に対して絶えず冷静かつ客観的に批判を加え、反省し、鑑定評価制度の進歩・改善に努めなければならない。
しかしながら、根本的に評価基準を見直し、より実際的な方法論の検討をしようとする機運は、今のところ見られない。
自明の理と思っていることが実は案外解っていないのは、前述のとおりである。
反省のないところに進歩はない。
解らないことは解らないと素直に受け止め、それではどのような方法があるのか等について研究すべきと考える。
社会の厳しい批判を糧に、鑑定制度の更なる発展を願わざるを得ない。
どんなにいい加減と批判されようとも、鑑定制度抜きに日本経済は動かない。
ガリレオの言葉を借りるまでもなく、「それでも鑑定制度は動いている」のである。
以上、思いつくまま偉そうにご託を並べたが、別に悪口を言うつもりはなく、個人事務所の将来を考えての年寄りの繰言である。
ただそうは言っても何か行動して欲しいと思うのも事実である。
中には的はずれのことや間違っている点もあるかもしれないが、浅学非才に免じご容赦を願うものである。
少し自虐的な反省が続いたので、改めて現在の鑑定制度の果たしている役割について考えてみたい。
鑑定制度は、もともと公共用地の買収の問題を契機に誕生した経緯があると聞いている。
それが年々拡大し、相続税・固定資産税等の公的評価の他、証券化不動産・減損会計等の私的評価にも拡充され、日本経済は最早不動産鑑定士抜きには動かない状況となっている。
前述したように、現行の鑑定評価は確かに不備なところも多く、客観性に乏しい(非科学的?)と批判されてはいるが、それでは誰もが反論のしようがない科学的鑑定方法があるのかと言えば、残念ながらその方法を持ち合せてはいない。
したがって、いかなる批判を受けようとも、現行の鑑定制度に代る方法がない以上、我々は現在有している多様な技術や方法を駆使して日本経済にビルトインされた鑑定制度に対する社会の負託に応えなければならないものと考える。
そのためには、現行の鑑定評価方法に対して絶えず冷静かつ客観的に批判を加え、反省し、鑑定評価制度の進歩・改善に努めなければならない。
しかしながら、根本的に評価基準を見直し、より実際的な方法論の検討をしようとする機運は、今のところ見られない。
自明の理と思っていることが実は案外解っていないのは、前述のとおりである。
反省のないところに進歩はない。
解らないことは解らないと素直に受け止め、それではどのような方法があるのか等について研究すべきと考える。
社会の厳しい批判を糧に、鑑定制度の更なる発展を願わざるを得ない。
どんなにいい加減と批判されようとも、鑑定制度抜きに日本経済は動かない。
ガリレオの言葉を借りるまでもなく、「それでも鑑定制度は動いている」のである。
以上、思いつくまま偉そうにご託を並べたが、別に悪口を言うつもりはなく、個人事務所の将来を考えての年寄りの繰言である。
ただそうは言っても何か行動して欲しいと思うのも事実である。
中には的はずれのことや間違っている点もあるかもしれないが、浅学非才に免じご容赦を願うものである。
(2008年6月 「不動産鑑定評価の今日的課題」)