公的評価の均衡化・適正化と適正な時価について ~ Vol.1
2024.09.05
VOL.01 公的評価の均衡化・適正化
土地基本法第16条の趣旨に基づき、平成6年評価替から公示価格・基準地価格の7割を目途に評価の均衡化・適正化が進められたことは記憶に新しい。
しかし、平成6年評価替から既に5回目の評価替を終えつつあるが、7割評価の導入によって新たな問題が起きつつある。
第一に、相続税路線価との均衡化である。
相続税路線価と固評路線価は相互に均衡化を図るものとされ、土地評価協議会を通して意見交換されているが、固評に合わせて3年に一度の開催にとどまっている。
固評は3年に一度、相評は毎年のため、2年間のタイムラグと担当鑑定士がお互いの担当地区について関知していないため、必ずしも十分なスリ合わせができていないのが実情である。
市町村と国税局、固評担当鑑定士と相評担当鑑定士との連携・連絡のあり方等、乗り越えるべき課題は多い。
更に、昨今は地方財政の逼迫から地価調査地点の大幅な削減・廃止が検討されている他、地価公示地点もマイナスシーリングの対象となっている。
その為、市町村は削除地点に対応する形で固評標準地を増設しなければならないが、財政再建等から対応にも限界がある。
その一方で、相評路線価の付設対象地域は年々拡大を続けている。
相評路線価は、相続税・贈与税等のためというよりは、減損会計・担保評価のために利用されることの方がはるかに多くなっている。
しかもその利用者の大半は担税力の大きい金融機関や大手会計事務所・不動産業者等であり、公的評価の利用のあり方が変質しはじめている。
地価下落の収まらない地方市町村にとっては、公的評価の均衡化・適正化ではなく、公的評価の一元化の方がより国民の負担が少ないのではないかと思われる。
土地基本法第16条の趣旨に基づき、平成6年評価替から公示価格・基準地価格の7割を目途に評価の均衡化・適正化が進められたことは記憶に新しい。
しかし、平成6年評価替から既に5回目の評価替を終えつつあるが、7割評価の導入によって新たな問題が起きつつある。
第一に、相続税路線価との均衡化である。
相続税路線価と固評路線価は相互に均衡化を図るものとされ、土地評価協議会を通して意見交換されているが、固評に合わせて3年に一度の開催にとどまっている。
固評は3年に一度、相評は毎年のため、2年間のタイムラグと担当鑑定士がお互いの担当地区について関知していないため、必ずしも十分なスリ合わせができていないのが実情である。
市町村と国税局、固評担当鑑定士と相評担当鑑定士との連携・連絡のあり方等、乗り越えるべき課題は多い。
更に、昨今は地方財政の逼迫から地価調査地点の大幅な削減・廃止が検討されている他、地価公示地点もマイナスシーリングの対象となっている。
その為、市町村は削除地点に対応する形で固評標準地を増設しなければならないが、財政再建等から対応にも限界がある。
その一方で、相評路線価の付設対象地域は年々拡大を続けている。
相評路線価は、相続税・贈与税等のためというよりは、減損会計・担保評価のために利用されることの方がはるかに多くなっている。
しかもその利用者の大半は担税力の大きい金融機関や大手会計事務所・不動産業者等であり、公的評価の利用のあり方が変質しはじめている。
地価下落の収まらない地方市町村にとっては、公的評価の均衡化・適正化ではなく、公的評価の一元化の方がより国民の負担が少ないのではないかと思われる。
民間競売制度の導入を考える ~ Vol.9
2024.08.29
VOL.09 民間競売の課題と期待
司法競売にしろ、民間競売にしろ、差押時の現況確定と調査の問題が多いのは先に述べたとおりである。
民間競売が司法競売と同等の効果を発揮していく為には、司法競売特有の問題の研究が必要と考える。
公権力の行使が必要となる民間競売ならば、その存在意義は大きいとは言えない。
事実、公権力の行使の必要のない物権は、今でも任意売却に回されており、競売事件の申立件数は減少している。
いずれにしても、司法競売の問題点を回避しつつ、民間競売の特性を発揮させるためには、関連法令の相当の改正が必要と思われる。
ところで、抵当権の実行を迫られた債務者・所有者の心理的抵抗感は強いが、現場経験のない人にはなかなか理解できないことである。
法律どおりに行動してくれるのなら、誰も苦労はしない。
いくら契約があっても、追いつめられた債務者・所有者は、なかなか素直になれないものである。
競売に追い込まれれば冷静に対応することは難しく、当事者でなければ理解できないことも多い。
競売に追い込まれた債務者・所有者との微妙な関係を円滑に解決するための万全なる方法があるわけでもないのであるから、現行制度に固執することなく、司法競売・民間競売それぞれの長所を十分に理解し、債務者・所有者・債権者のみならず広く国民一般にとって負担が少なく、理解の得られ易い、そして安心して借りられる金融制度の拡充も合せて検討されることを期待したい。
また、制度論争を対立論として捉え、感情論に振り回されることのないよう、評価人も含めて社会の要請に応えられるよう、冷静な分析と着実な業務の遂行により、競売制度の更なる拡充と発展に努力すべきではないかと考えている。
司法競売にしろ、民間競売にしろ、差押時の現況確定と調査の問題が多いのは先に述べたとおりである。
民間競売が司法競売と同等の効果を発揮していく為には、司法競売特有の問題の研究が必要と考える。
公権力の行使が必要となる民間競売ならば、その存在意義は大きいとは言えない。
事実、公権力の行使の必要のない物権は、今でも任意売却に回されており、競売事件の申立件数は減少している。
いずれにしても、司法競売の問題点を回避しつつ、民間競売の特性を発揮させるためには、関連法令の相当の改正が必要と思われる。
ところで、抵当権の実行を迫られた債務者・所有者の心理的抵抗感は強いが、現場経験のない人にはなかなか理解できないことである。
法律どおりに行動してくれるのなら、誰も苦労はしない。
いくら契約があっても、追いつめられた債務者・所有者は、なかなか素直になれないものである。
競売に追い込まれれば冷静に対応することは難しく、当事者でなければ理解できないことも多い。
競売に追い込まれた債務者・所有者との微妙な関係を円滑に解決するための万全なる方法があるわけでもないのであるから、現行制度に固執することなく、司法競売・民間競売それぞれの長所を十分に理解し、債務者・所有者・債権者のみならず広く国民一般にとって負担が少なく、理解の得られ易い、そして安心して借りられる金融制度の拡充も合せて検討されることを期待したい。
また、制度論争を対立論として捉え、感情論に振り回されることのないよう、評価人も含めて社会の要請に応えられるよう、冷静な分析と着実な業務の遂行により、競売制度の更なる拡充と発展に努力すべきではないかと考えている。
(2008年1月 「民間競売制度の導入を考える」)
民間競売制度の導入を考える ~ Vol.8
2024.08.22
VOL.08 司法競売と民間競売の限界
以上のように、競売評価においては差押時において抵当権設定以降に発生したあらゆる状況を確定し、評価に反映させなければならない。
債権者からみれば、お金と時間はかかるが、抵当権設定後、抵当物の管理をロクにしなくても、差押時における現況を確定して売却してくれる司法競売は便利なものと思われる。
また、司法競売の利点としては、やはり信頼性が一番である。
裁判所が関与してくれているという安心感は、何物にも代え難い。
しかし、司法競売にも前述したように様々な問題点があるのも事実である。
他方、民間競売制度が司法競売制度と同等の信頼性を確立するのは容易なことではない。
耐震偽装から始まった食に関する偽装等、民の信頼性は大きく揺らいでおり、制度の維持・保全は一筋縄ではいかないものと思われるが、制度設計次第で対応可能と考える。
ところで、抵当権設定後数10年も経過すれば、当初の人間関係は崩れ、契約を守るという期待はできない。
任意の話し合いができない以上、公権力の行使によって強制的に金銭関係を整理する方法の社会的存在意義は大きい。
これに対して民間競売は、私的実行特約付抵当権設定(仮称)となり、売却方法等はあらかじめ契約によって定めるとしている。
抵当権設定時と差押時の状況に変化がなく、人的関係も維持されていれば私的実行特約における契約は良く守ってくれるものと期待される。
しかし、現実の日本では、契約を守らない輩が出てくる。
特に抵当権設定後数10年も経過すれば、設定時の状況を良く知る者はいないことが多く、人間関係も破壊されていることが多いものと思われる。
司法競売においてさえ、現況確定の調査に非協力的であることは日常茶飯事であり、現況調査命令・評価命令という葵の御紋の威力は、予想以上に小さい。
民間競売で仮に人間関係が破壊され、任意の調査協力が得られない、あるいは協力するふりをしての調査引延ばし、第三占有者からの有益費の請求、留置権の行使等の状態が生ずれば、私的実行特約付抵当権による民間競売は結局不調になるものと思われる。
つまり、これらを排除しようとすれば公権力の行使になることから、執行官に協力依頼するか、訴訟によって法的に対応しなければならず、司法競売より費用と時間がかかることも予想される。
民間競売が良く機能する前提条件としては、債権者・債務者の人的関係・信頼関係が維持され、抵当物の状態に大きな変化がなく、売却時の調査等に積極的に協力してくれる状態が保証されることが必要と思われることから、民間競売の円滑な運営のハードルは意外と高いのかもしれない。
以上のように、競売評価においては差押時において抵当権設定以降に発生したあらゆる状況を確定し、評価に反映させなければならない。
債権者からみれば、お金と時間はかかるが、抵当権設定後、抵当物の管理をロクにしなくても、差押時における現況を確定して売却してくれる司法競売は便利なものと思われる。
また、司法競売の利点としては、やはり信頼性が一番である。
裁判所が関与してくれているという安心感は、何物にも代え難い。
しかし、司法競売にも前述したように様々な問題点があるのも事実である。
他方、民間競売制度が司法競売制度と同等の信頼性を確立するのは容易なことではない。
耐震偽装から始まった食に関する偽装等、民の信頼性は大きく揺らいでおり、制度の維持・保全は一筋縄ではいかないものと思われるが、制度設計次第で対応可能と考える。
ところで、抵当権設定後数10年も経過すれば、当初の人間関係は崩れ、契約を守るという期待はできない。
任意の話し合いができない以上、公権力の行使によって強制的に金銭関係を整理する方法の社会的存在意義は大きい。
これに対して民間競売は、私的実行特約付抵当権設定(仮称)となり、売却方法等はあらかじめ契約によって定めるとしている。
抵当権設定時と差押時の状況に変化がなく、人的関係も維持されていれば私的実行特約における契約は良く守ってくれるものと期待される。
しかし、現実の日本では、契約を守らない輩が出てくる。
特に抵当権設定後数10年も経過すれば、設定時の状況を良く知る者はいないことが多く、人間関係も破壊されていることが多いものと思われる。
司法競売においてさえ、現況確定の調査に非協力的であることは日常茶飯事であり、現況調査命令・評価命令という葵の御紋の威力は、予想以上に小さい。
民間競売で仮に人間関係が破壊され、任意の調査協力が得られない、あるいは協力するふりをしての調査引延ばし、第三占有者からの有益費の請求、留置権の行使等の状態が生ずれば、私的実行特約付抵当権による民間競売は結局不調になるものと思われる。
つまり、これらを排除しようとすれば公権力の行使になることから、執行官に協力依頼するか、訴訟によって法的に対応しなければならず、司法競売より費用と時間がかかることも予想される。
民間競売が良く機能する前提条件としては、債権者・債務者の人的関係・信頼関係が維持され、抵当物の状態に大きな変化がなく、売却時の調査等に積極的に協力してくれる状態が保証されることが必要と思われることから、民間競売の円滑な運営のハードルは意外と高いのかもしれない。