担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.4
2025.01.09
VOL.04 最低売却価額制度の廃止と売却基準価額

 最低売却価額制度は、平成17年3月末に廃止され、4月からは売却基準価額となった。

 最低売却価額廃止の理由は、前二者と同じく売却率が低いのは最低売却価額が競売市場とミスマッチをおこし、これが障害となって結果的に売却が進まないというものであった。

 売却物件は所有者の意思に反して売却する為、一般の物件に比較して売りにくいのは当然である。
 また、売却単位が一般の市場ではあり得ない組合せとなっているものもある。

 いずれにしても、最低売却価額制度をめぐる議論は物件が売却しやすいように整理されてから市場に出される一般物件と、そうではない競売物件をゴチャ混ぜにしていたと思われる。

 最低売却価額が廃止され売却基準価額となって早一年が過ぎたが、この間に競売市場がコペルニクス的に大回転したかと言えば、特に大きく変った点は見られない。
 少なくとも、個人的にはそう感じている。

 ところで、売却基準価額は最低売却価額ではないので、この価額を2割下回る価額(買受可能価額という)でも入札は可能である。

 それでは全国的にみて、売却基準価額を下回る価額で落札されたケースはどの位あるのであろうか。

 確実な統計データはないが、関係者の話を総合すると概ね5%前後であるようである。
 仮に売却基準価額ではなかったとしたら、売却率は5%前後低下し、売却期間も再入札・再評価の時間だけ長期化したことになる。

 言葉を換えれば、この改正によって売却率は5%程度改善し、売却期間も数ヶ月は短縮されたと評価することも可能である。

 しかしながら、法改正に費やされたエネルギーとの比較で考えると、改正のための改正と思われても仕方がない。
2025.01.09 09:39 | 固定リンク | 鑑定雑感

- CafeLog -