評価基準の罪と罰 ~ Vol.3
2022.04.21
VOL.03 標準宅地とは何か

固定資産評価基準(以下固評基準)によれば、標準宅地とは、原則として状況類似地区を代表する同基準による画地補正率が1.0の中間画地とされている。

一方、相続財産評価基本通達(以下基本通達)によれば、どういう訳か標準宅地の定義もなければ、路線付設の方法についての記載も見当たらない。

 その内容は、専ら路線価を前提とした評価計算の方法を示しているだけである。

ところで、相続税路線価は公示価格等の8割を目途としているが、8割水準がどのように決定されたのかは、筆者の勉強不足のせいで、全くもって分からない。

固定資産税路線価が7割となったのは、相続税路線価が固定資産税より1年か2年(記憶がハッキリしないのでご容赦下さい)早く8割水準で先行したため、これとの均衡もあって7割に落ち着いたものと思われる。

他方、相続税評価の8割水準が政府内において公式的に議論にならなかったのは(あったのならご容赦下さい)、法律ではなく、通達であったためと思われる。

つまり、法律ではないので、国民的議論は不要ということになるのではないだろうか。
2022.04.21 09:34 | 固定リンク | 鑑定雑感
評価基準の罪と罰 ~ Vol.1・2
2022.04.15
VOL.01 不動産取引 路線価の2.6倍

「上場不動産投資信託(Jリート)で最近取得された物件の価格水準が、相続税などの基準となる路線価の平均で2.6倍となっていることがわかった」との報道が、朝日新聞2017年8月26日の一面トップを飾った。

ところで、相続税等の評価の基礎となる路線価は、公示価格等の8割程度を目途として付設されていることから、路線価の2.6倍ということは、公示価格の2倍の取引ということになる。






VOL.02 路線価とは何か

固定資産評価基準によれば、路線価は、一般的に交差点から交差点までの路線(原則として街区長と同じになる)の中間に位置する画地補正率1.0の中間画地を標準として価格設定されており、路線価設定の基準となる画地を標準宅地と称している。

平成元年の土地基本法の成立を機に、平成3年1月に「総合土地政策推進要綱」が閣議決定され、その中で「固定資産税評価については平成6年度以降の評価替において、同法第16条の趣旨を踏まえ、相続税評価格との均衡にも配慮しつつ、速やかに地価公示価格の一定割合を目標にその均衡化・適正化を推進する」とされた。

これを受け、検討の結果、地価公示価格等の7割程度の水準を目途に宅地の評価を行なうことになったことはご承知のとおりである。
2022.04.15 09:07 | 固定リンク | 鑑定雑感
改正個人情報保護法と不動産取引情報 ~ Vol.4
2022.04.07
VOL.04 個人と公的団体との取引

 ところで、話は少し変わるが、改正個人情報保護法では、個人情報を生存する個人としていることから、死亡した個人や法人は、どう扱われるのであろうか。

Jリートでは、評価書や売買価格を公開している。

 上場会社も、公開している。

 この法律を単純に読むと、売主・買主ともに法人であれば、個人情報に該当しないことになる。


 それでは売主が個人・買主が公的団体の場合は、一体どういう扱いになるのであろうか。

これまで、売買当事者の一方が個人であれば、疑いもなく個人情報と認識し、情報提供は拒否されてきた。
 私もそのように理解してきたが、改正個人情報保護法の全面施行を機会に調べたところ、大変参考となる最高裁判決を目にしたので、ご承知の方も多いと思われるが紹介する。

事例は、名古屋市土地開発公社を相手に、公社が先行取得した土地の一覧表について公開請求を行なったものである。
 
 平成17年7月15日の判決によれば、保有土地一覧表には、公社が保有する土地ごとに事業名称・所在地・地目・面積・契約年月日・取得価格・補償金の額並びにそれらの単価等が記載されているが、取得価格そのものが個人情報に当たるかどうかが争われている。

これによれば、個人から取得した土地の取得価格に関する情報は、特定の個人を識別しうるが、公示価格を規準として算定しており、一般人であればおおよその見当をつけることができる一定の範囲内の客観的な価格ということができるので、地権者にとって、私事としての性質が強いものではないので、公開に親しまない個人情報であるとはいえないため、非公開情報には該当しないと判示している。

但し、補償額は非開示情報に該当するとしている。


つまり、公的団体が取得した土地の所在・地番・地積・取得価格は、非公開情報に該当しないので、公開しなさいということである。


では、公有地を売却した場合の売却価格は、個人情報になるのであろうか。

 売買当事者の一方が、法人または公共団体の場合はどうなるのか。

 個人情報の定義によれば、法人は含まれないので、法人間取引や公共団体と法人間の取引は個人情報に該当しないことになるが、本当にそうなるのであろうか。

 ビッグデータの利活用が求められる時代においては、不動産取引情報の扱い方について更なる議論の深化が必要と考える。

 
最後に、2017年2月13日に発表された、新経済連盟の不動産市場拡大推進PTによる『不動産・新産業革命~名目GDP600兆円に向けた成長戦略』の一部を紹介する。

このレポート(全33ページ)の中で、不動産総合データベースが持つと更に望ましい事項として、次の四つを挙げている。

一、各種情報の紐付けを可能とする不動産IDの整備

二、成約取引情報

三、民間における不動産売買以外の情報

四、インスペクション実施の有無と、実施している場合の内容の情報

次いで、個別政策提言の内容として、

 提言1.不動産情報バンクの整備
 提言2.不動産の利活用を推進するための評価手法の見直し
 提言3.不動産再生手法の導入の検討

 を挙げ、提言1では、登記簿における成約取引情報記載の必須化、提言2では、評価手法の見直しと利用促進と題し、(公財)不動産流通センター策定の「既存住宅価格査定マニュアル」の制度化と、不動産・金融業界による活用の促進を提言している。

 レポート全体を見ても、残念ながら不動産鑑定・不動産鑑定士の活用という文言は、一切見当たらない。
 我々はこのことを良く良く思い知る必要がある。


(2017年9月 傍目八目掲載/「改正個人情報保護法と不動産取引情報」)

2022.04.07 10:27 | 固定リンク | 鑑定雑感

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