拝啓 裁判官の皆様 鑑定は科学ではありません!! ~ Vol.2
2022.11.02
VOL.02 経緯

 市有地売却までの経緯をみると、平成10年に62,000.43㎡の市有地において宅地造成事業を開始したが、需要が少ないという理由で平成15年に同事業を廃止。
 その後平成17年に工業用地に転換する事業計画を立てたが、その事業も実現しなかった。

 市は平成20年2月に本件土地を住宅地にする計画を表明し、平成20年10月1日を価格時点とした鑑定評価額10億5,400万円(平方メートル当たり17,000円)と同額を予定価格として公表し、一般競争入札に付したが、申込みをした者はいなかった。
 同年11月14日に再度予定価格を非公表とした一般競争入札を実施したが、申込をした者はいなかった。


市は平成22年秋に、本件土地の一部についてでも買受けの応募があれば売払い可能となるようにするため、応募者から土地利用計画等の事業実施に係る提案を受け、これを審査して事業者を選定する、いわゆるプロポーザル方式による3回目の売却を実施した。

一方、市は平成22年9月議会で、本件土地を一括ではなく4万㎡以上を購入するという条件で、購入を希望する面積及び価格の提示を受けること、予定価格は非公表とすること、プロポーザル方式によって相手方を選定する方針であることについて説明。

同市の不動産評価審議会は、平成22年9月、本件土地の現在の価格として、その評価額を4万㎡につき5億0566万円、平方メートル当たり12,641円とした。
 ちなみにこの価格は、鑑定価格より約26%低い。

市は、同月30日、予定価格を非公表としてプロポーザル方式により事業実施者を公募し、同年10月18日、本件土地が大規模でかつ近隣に類似する適切な取引事例が存在しないとして、取引事例比較法による比準価格を採用せず、事業実施者が本件土地の造成・販売に要する期間を考慮して、5年後の価格を予測することとしてその予定価格を4億5657万1166円(4万㎡につき2億9458万円)、平方メートル当たり7,364円と定めた。(この価格は鑑定評価格より約57%低い)

平成22年10月26日、公募により1社からの応募があったが、購入を希望する面積は4万㎡、価格は2億5800万円で、予定価格を約12.4%下回っていた。

その頃、本件土地に近い大手企業の社宅跡地が売却され、宅地化されるという報道があり、前記の応募会社は同年11月24日応募を撤回した。


市は、本件土地について、再度不動産鑑定を行い、平成23年10月1日を価格時点とする鑑定評価額7億1300万円(11,500円/㎡)の鑑定評価書の提出を受け、同年11月4日の不動産評価審議会は、予定価額を鑑定評価額と同額とした。(この価格は、前年の応募価格6,450円/㎡より約78%高い)

市は、同年11月8日、議員全員協議会において、4回目の売却手続きを行うことを説明した。

その後、平成23年11月9日、売払最低面積4万㎡、予定価格を非公表として、プロポーザル方式により事業実施者を公募し、同月18日に前回とほぼ同様の理由で、不動産評価審議会の予定価額より低い3億3777万8342円(平方メートル当たり5,448円)と定めた。

E社とA社は平成23年11月25日、共同で本件土地全体を3億5000万円で買受け、宅地及び施設用地とするという内容で応募したが、他に応募者はいなかった。

A市長は、平成23年12月5日、前記会社と条例による議会の議決を得ることを停止条件として、3億5000万円で売却するという仮契約を締結した。
市は、平成23年12月8日、議員全員協議会においてこれらの経緯を説明し、平成23年12月12日に市議会に提出した。
市議会は、生活環境委員会に審議を付託した。
市は、鑑定評価額が7億円であること、予定価格が3億3777万8342円であることを説明し、同委員会は本件議案を可決する議決をした。

平成23年12月15日の本会議において、鑑定評価格は1坪当たり3万8000円(11,500円/㎡)であるのに、本件における譲渡価格は坪当たり1万8000円(5,445円/㎡)になるなどの発言があった。
 決算特別委員会は、本決算を不認定としたものの、平成24年12月14日の本会議において、本件譲渡による収入3億5000万円を含め、本件決算を認定する議決を行った。


以上、経緯を判決より引用しましたが、問題は、鑑定評価額の半値以下で処分したことが適正な対価なくして処分したことになるのかどうかです。
2022.11.02 10:18 | 固定リンク | 鑑定雑感

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