パラサイト北海道「北海道における2007年問題と2030年問題」 ~ Vol.3
2022.12.28
VOL.03 2007年問題について

前述したように、北海道は人口の面から見ると、今後24年で急激な人口減少と、増大する高齢人口の問題に直面する。

しかし、さし当たっての大きな問題は2007年である。
つまり、2007年とは団塊の世代が退職する年である。
団塊の世代を昭和20年~昭和25年と仮定すると、2007年を境に退職を迎える又は迎えた団塊の世代は、2000年の北海道の人口比で約10%弱、約55万人である。

そのうち男性が約48%を占めているが、男性だけでみても2007年を境に毎年約5万人が退職することになる。
毎年退職すると推定される5万人は、余生をどこで暮らすのであろうか。

地方都市において退職世代が直面する問題には次のものが考えられる。



イ.年金受給開始まで5年あるが、田舎には働く場所がない。


ロ.両親は既にいない為、田舎に残留すべき障害はない。


ハ.子供達は皆成人し、そのほとんどが大都市で生活している。


ニ.高度医療を受けることができる病院は田舎にはない。


ホ. 介護保険料を支払っているが、介護を引き受けてくれる若い世代が少なく、介護施設も十分ではない。


ヘ.現役時代に建てた大きな家には夫婦二人で、それさえも建替時期に来ている。



これらの状況を考えると、大量に退職を迎える団塊の世代が退職後も、田舎に留まるべき理由・条件はほとんど見当たらない。

したがって、退職後の大半の人は子供が暮らしており、また働く場所や医療機関等の充実した都会に出ざるを得ないと思われる。

実際に北海道の市町村の大半は人口1万人程度であることから、退職後に安心して暮らすには不安である。

 これまでの退職者の人口動態をみると、北海道212市町村のうち、転入者が転出者を上回っている市町村は約30市町村にすぎず、残りの85%の市町村は転出者の方が多くなっている。

ちなみに支庁別で見ると14支庁のうち、転入増となったのは石狩支庁のうち札幌及びその近郊都市と十勝支庁のみで、残りの12支庁全てが転出により人口を減少させている。

また、人口問題研究所の市区町村別将来人口推計をみると、2000年(平成12年)を基準として人口が増加すると予測されているのは合併前の212市町村のうち、わずか5市5町である。

市部では全てが札幌市及びその近郊(江別・千歳・恵庭・北広島)で、町村部では道南で2町(上磯・大野)、道央1町(南幌)、道北で1町(東神楽)、道東で1町(中標津)の5町のみで、残りの202市町村、
全体の約94%が人口減少に悩まされることになる。

人口減少率は郡部ほど大きく、最大で利尻・礼文の約65%、202市町村平均でも約37%の減少率となっており、人口半減は現実のシナリオとなりつつある。

(2019年4・5・6月 北方ジャーナル掲載/「パラサイト北海道」)

2022.12.28 14:35 | 固定リンク | 鑑定雑感
パラサイト北海道「北海道における2007年問題と2030年問題」 ~ Vol.2
2022.12.22
VOL.02 北海道の人口構造と市町村

北海道の人口は、2000年(平成12年)で約5,683,000人である。

北海道の人口は平成9年の約5,702,000人(国勢調査)をピークに、減少に転じている。

人口問題研究所の将来推計人口によれば、2030年の北海道の人口は約4,768,000人となっており、ピークに比較して100万人の人口減

少が予測されている。

一方、市町村数は212市町村(合併前)である。

札幌圏(札幌市・小樽市・江別市・千歳市・恵庭市・石狩市・北広島市)と苫小牧市・室蘭市・函館市・旭川市・帯広市・釧路市・北見

市の地方中核都市を合わせた14都市の人口約3,768,000人を除くと、残りの一市町村当たりの平均人口はわずか9,700人程度である。

2030年に100万人の人口が減少するものとすると、単純に言えば100市町村が消えて無くなることになる。
100万人の人口減少まで約24年である。

したがって、単純に言えば2006年以降、毎年約4市町村が消えてなくなる計算になる。

ところで、北海道の人口構造を見ると次のとおりであり、2030年までに年少人口・生産人口共に大きく減少するのに反し、65歳以上

の老齢人口は急速に増大する。





他方、北海道における2000年における公務員(地方・国家・教員等を含める)は約223,000人であり、その割合は北海道の総人口の約4%である。
これを生産年齢(15~65歳)人口比で見ると約6%弱となっているが、現役世代(20~60歳)の割合から見ると約7%である。

とすれば、2030年の北海道は推計人口約4,768,000人のうち、老齢人口が約33.6%・年少人口が約10.2%~合わせて43.8%、つまり約44%が扶養者になり、これに公務員が加わるとなんと人口の半分が税金ない

し現役世代の稼ぎで暮らすことになる。

人的な関係だけでみると、2030年の北海道はどう考えても経済的には成り立たないと考えざるを得ない。
2022.12.22 09:05 | 固定リンク | 鑑定雑感
パラサイト北海道「北海道における2007年問題と2030年問題」 ~ Vol.1
2022.12.15
VOL.01 2007年問題の背景

 2007年とは一言で言えば、団塊の世代の去就の問題である。

 ところで、日本の驚異的な経済成長とそれに裏打ちされた土地神話は、つまるところ日本の人口構造が作り出したものと考える。


敗戦の焦土に残ったのは、戦後生まれの子供達である。

 消耗品として扱われた人間が敗戦により消耗品ではなくなり、中国・満州からの帰還者が何もない国土に満ちあふれたのである。

 特に北海道は広大な未開地があった為、開拓と称して帰還者が全道各地に入植している。


この団塊の世代の成長によって旺盛な消費需要が発生し、これが生産を促し、その結果工場労働者の所得が増加して更なる消費が発生拡大した。

 これにより従来にも増して生産は拡大し、やがて国内で消費しきれない生産は海外に目を向け、とどまることのないと思われた高度成長を続けてきたのである。

しかし、人間に無限の成長がない以上、消費が無限に拡大するはずもなく、無限の経済成長はあり得ない事になる。

 経済活動の基本は人間であり、生産については生産設備をロボット化する等して人間が関与する工程を減らすことは出来ても、消費を機械化することは出来ない。

 したがって、経済成長にも限度があるのは自明の理である。

人為的な引き金によりバブル経済は崩壊し、経済は一転して低成長からマイナス成長に陥っているが(もっとも昨今は一部の地域で持ち直してはいるが)、考えてみれば日本の人口構造からすれば遅かれ早かれ、ゼロ成長・マイナス成長になるのはローマクラブの提言を待つまでもなく、既定の路線と言わなければならない。

経済成長を支えた団塊の世代も老境にさしかかり、これ以上消費するにも消費出来ない状況にある。

 若い時と同じように暴飲暴食し、朝方まで遊び、ファッションに金をつぎ込んだりして、これまで以上に消費を支えることは出来ない。

 まして、企業のリストラ等による所得の減少、増税による可処分所得の減少、年金・医療問題等をかかえる中で、景気の地域格差から大量の失業に悩まされるに至っては、消費を節約しても消費を拡大することなど、逆立ちしたって無理というものである。
2022.12.15 16:00 | 固定リンク | 鑑定雑感

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