不動産のグローバル化と道内の取引事情 ~ Vol.1・2
2024.02.08
VOL.01 はじめに

 本稿は、令和3年2月5日に開催された、全日本土地区画整理士会北海道支部及び北海道土地区画整理コンサルタント協会共催の土地区画整理研修会において講演させていただいた内容を要約したものです。

 一部講演内容と異なる箇所もあると思いますが、予めご容赦下さるようお願いいたします。



VOL.02 水資源条例制定の背景と道内における不動産の取引事情について

 筆者の知る限り、外国資本による土地取引は北海道水資源の保全に関する条例が施行された平成24年4月1日(2012年)よりかなり前からあったと記憶している。

 それが突如問題となったのは、外国資本に買収された山林の中に、自治体の水道の取水口があり、水源の確保に問題があると騒がれたからである。

 これが全国的にもセンセーショナルに報道されたため、外国資本による山林買収は、あたかも水資源を狙ったものであるかのように思われ、今日に至っている。

 本州で北海道の山林取引の話をすると、判で押したように「水資源か?」と訊かれるのには、閉口したものである。

 個人的には、住宅新報(平成22年6月1日号)に狙われる北海道の森と題して報告させていただいた。
 早いもので、あれから10年以上経過したが、昨今は外国資本による土地問題はリゾート地に移り、水資源を狙った山林取引の報道は皆無に等しい。

 個人的には、水資源を狙って山林取引をしたのではなく、単に広大な山林の中にたまたま取水口があったので問題になったにすぎないと思っている。

 筆者も、山林の処分について相談を受けることがあるが、外国資本の人に言わせると、規模の小さい山林(10ha前後)については、興味が無いとのことであった。

 実際、長万部の山林も一筆で約60ha程の規模であったが、それでも小さいと言われたので、仲介してくれた不動産会社にお願いして、隣接地の所有者を説得してもらい、併せて約120ha程の規模にして、やっと買ってもらったことがあった。

 大手の山林買収をしている会社の人にも聞いたことがあるが、やはり100ha以上のまとまった山林でなければ買収しないとのことであった。(もちろん価格は地元の価格水準ではあるが)

 ところで、条例制定後のまとまった山林の取引といえば、新聞でも報道されたが赤井川村明治地区の山林約270haが、シンガポール系の資本により買収された事例がある。

 山林以外では、中国系資本による平取町豊糠地区の農地を含めた集落が丸ごと買収された事例がある。

 面積は約123haとのことであるが、山林も含めるともっと規模が大きくなるらしいが、詳細は不明である。(「領土消失」角川新書参照)

 いずれの農地も買収してから5年以上経過しているものと思われるが、農地としての利用はなされていないようである。

 山林・農地以外では、札幌は言うに及ばず、千歳市・恵庭市・小樽市の宅地取引も相当数見られるが、報道されることはない。

 尚、筆者の田舎でも破産した運輸会社の事務所及びその敷地が中国資本に買収され、現在貿易系と思われる会社の看板が掲げられている。

 宅地・建物に関しては、自用・投資用に関わらず買収されているようであるが、その実態は不明である。
2024.02.08 16:09 | 固定リンク | 鑑定雑感

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