鑑定業界を取り巻く現状と課題 ~ Vol.3
2024.10.10
VOL.03 公的評価と鑑定法の関係の明確化
公的評価といえば、地価公示・地価調査・相続税標準宅地評価・固定資産税標準宅地評価が挙げられる。
このうち、鑑定業者として発行していないものは前二者で、鑑定業者として発行しているのは後二者である。
ところで、地価公示法第26条をみると、地価公示は鑑定法に該当しないとする例外規定があるので、評価書を個人名で発行することに特に問題はないと考える。
しかし、地価調査には例外規定が見当らないので、資格者個人名で評価書を発行するのは、鑑定法違反と考える。
また、後二者の評価書は業者名で発行しているものの、形式・内容は鑑定法の要件を満たしていない。
これらのことを一体どう考えれば良いのであろうか。
多くの不動産鑑定士はこのことに全く無頓着であり、若干の関心があっても役所の指示だから要件を満たしていなくても良い、或いは、公的評価の一環だから地価公示法を拡大解釈して、当然に鑑定法に抵触しないと考えている人が多い。
しかし、これで本当に良いのであろうか。
仲間内での議論では、心情的にはそう考えたいと思うのも無理からぬことと考えるが、広く社会に対してそうだと言えるのなら、組織的にも明らかにしておく必要があるのではないか。
そうでなければ、早晩地価調査も一般競争入札によらざるを得なくなると思われる。
地価公示や相続税評価も一般入札にすべしということになれば、品質管理のできない発注者は報酬の多寡で業者を選定する為、無節操な業者が多い我が業界の秩序が崩れていくのは想像に難くない。
公的評価といえば、地価公示・地価調査・相続税標準宅地評価・固定資産税標準宅地評価が挙げられる。
このうち、鑑定業者として発行していないものは前二者で、鑑定業者として発行しているのは後二者である。
ところで、地価公示法第26条をみると、地価公示は鑑定法に該当しないとする例外規定があるので、評価書を個人名で発行することに特に問題はないと考える。
しかし、地価調査には例外規定が見当らないので、資格者個人名で評価書を発行するのは、鑑定法違反と考える。
また、後二者の評価書は業者名で発行しているものの、形式・内容は鑑定法の要件を満たしていない。
これらのことを一体どう考えれば良いのであろうか。
多くの不動産鑑定士はこのことに全く無頓着であり、若干の関心があっても役所の指示だから要件を満たしていなくても良い、或いは、公的評価の一環だから地価公示法を拡大解釈して、当然に鑑定法に抵触しないと考えている人が多い。
しかし、これで本当に良いのであろうか。
仲間内での議論では、心情的にはそう考えたいと思うのも無理からぬことと考えるが、広く社会に対してそうだと言えるのなら、組織的にも明らかにしておく必要があるのではないか。
そうでなければ、早晩地価調査も一般競争入札によらざるを得なくなると思われる。
地価公示や相続税評価も一般入札にすべしということになれば、品質管理のできない発注者は報酬の多寡で業者を選定する為、無節操な業者が多い我が業界の秩序が崩れていくのは想像に難くない。
鑑定業界を取り巻く現状と課題 ~ Vol.2
2024.10.03
VOL.02 原理原則の確認
以上のように正規の要件を満たさない鑑定評価類似業務は、我々の予想をはるかに超えて社会に浸透している為、最早価格を表示すれば 鑑定業務に当るから全て規制しろと言っても何の説得力もない。
たかだか6千人の鑑定士の為に、原理原則を振りかざしても国民は納得しないであろう。
とすれば、正規の鑑定とその要件を満たさない鑑定評価類似行為の線引きを明らかにし、正規業務以外の行為の法律的位置づけと責任の範囲を明確にすることが必要と思われる。
しかし、このことを協会内部だけで解決するのは至難の業である。
何故なら、正規の鑑定とそれ以外の業務の相異が広く社会に理解されていないからである。
元はと言えば、規制緩和により競争が激化し、内容よりも報酬の安さがモノを言う時代になったという側面の他、フルコースの正規鑑定よりザルそば程度で良いとする社会のニーズの変化も大きいと思われる。
いずれにしても、現行法は制定時から約44年を経ており、時代にそぐわない面も多々あると思われる。
また、このことが鑑定評価類似業務の蔓延をもたらしたとも言えるのではないかと思われる。
時代ニーズと将来を見据え、社会的見地から外部有識者(大学・弁護士会・金融証券業界等)に法制度の見直しを含めて検討することが必要と考える。
以上のように正規の要件を満たさない鑑定評価類似業務は、我々の予想をはるかに超えて社会に浸透している為、最早価格を表示すれば 鑑定業務に当るから全て規制しろと言っても何の説得力もない。
たかだか6千人の鑑定士の為に、原理原則を振りかざしても国民は納得しないであろう。
とすれば、正規の鑑定とその要件を満たさない鑑定評価類似行為の線引きを明らかにし、正規業務以外の行為の法律的位置づけと責任の範囲を明確にすることが必要と思われる。
しかし、このことを協会内部だけで解決するのは至難の業である。
何故なら、正規の鑑定とそれ以外の業務の相異が広く社会に理解されていないからである。
元はと言えば、規制緩和により競争が激化し、内容よりも報酬の安さがモノを言う時代になったという側面の他、フルコースの正規鑑定よりザルそば程度で良いとする社会のニーズの変化も大きいと思われる。
いずれにしても、現行法は制定時から約44年を経ており、時代にそぐわない面も多々あると思われる。
また、このことが鑑定評価類似業務の蔓延をもたらしたとも言えるのではないかと思われる。
時代ニーズと将来を見据え、社会的見地から外部有識者(大学・弁護士会・金融証券業界等)に法制度の見直しを含めて検討することが必要と考える。
鑑定業界を取り巻く現状と課題 ~ Vol.1
2024.09.26
VOL.01 鑑定業界を取巻く現状について
法律によれば「不動産の鑑定評価」とは不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することであり、不動産鑑定とは自ら行うと他人を使用して行うとを問わず、他人の求めに応じ報酬を得て不動産の鑑定評価を業として行うことをいうとされている。
ところが、簡易鑑定を追認した昭和50年代後半頃から簡易鑑定が普及し、昨今の簡易鑑定の認知度や普及率には目を見張るものがある。
また、鑑定評価の類似業務としては、デューデリジェンス・価格調査・固評路線価評価・DCF法による収益価格オンライン算定システム・補償コンの土地評価業務等があり、所謂正規の鑑定評価以外の業務は百花繚乱である。
ところで、補償コンの土地評価業務は、公式的には鑑定評価に当らないとされているが、昨今は個人情報保護法の影響で取引事例が入手できにくくなっている為、鑑定業の登録をしていない補償コン業者は業務の遂行に困難を来たしている。
その為、一般鑑定業者に事例提供を求めてくるケースが出てきているが、その一方でこのような事例提供は目的外利用であるから、提供はまかりならんと主張する人もいる。
デューデリジェンスは物件調査と価格調査を含んでおり、有償で請負っている為、鑑定評価類似行為に当ると考えるが、鑑定評価に当らないと解されているからか(公式的には確認されていないと思われるが)当該業務の担手は多種多様である。
仄耳するところによれば、不動産業者はもちろん、司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・興信所等も参加している。
報告内容・形式は千差万別であり、鑑定法に規定する要件を満たさないものがほとんどである。
固評路線価は、鑑定標準地の価格を基礎に統計解析して算定しているだけであるから鑑定評価に当らないとされ、航測会社がその大半を受注している。
しかし、本質的には地域分析を行ない、価格水準を判定しつつ全体のバランスを考慮しなければならず、とても単なる計算業務とは言えないと思うが、現実は数学的処理の方が不動産鑑定士の判断よりマシと思われており、近い将来固評路線価業務は我々鑑定士の手を離れることになるであろう。
価格調査業務は、机上評価を中心とし、A4サイズ1枚で3,000円~1万円位が相場である。
以上のように、我が業界を取り巻く環境は法制定時には予想し得なかった程広がりを見せている。
法律によれば「不動産の鑑定評価」とは不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することであり、不動産鑑定とは自ら行うと他人を使用して行うとを問わず、他人の求めに応じ報酬を得て不動産の鑑定評価を業として行うことをいうとされている。
ところが、簡易鑑定を追認した昭和50年代後半頃から簡易鑑定が普及し、昨今の簡易鑑定の認知度や普及率には目を見張るものがある。
また、鑑定評価の類似業務としては、デューデリジェンス・価格調査・固評路線価評価・DCF法による収益価格オンライン算定システム・補償コンの土地評価業務等があり、所謂正規の鑑定評価以外の業務は百花繚乱である。
ところで、補償コンの土地評価業務は、公式的には鑑定評価に当らないとされているが、昨今は個人情報保護法の影響で取引事例が入手できにくくなっている為、鑑定業の登録をしていない補償コン業者は業務の遂行に困難を来たしている。
その為、一般鑑定業者に事例提供を求めてくるケースが出てきているが、その一方でこのような事例提供は目的外利用であるから、提供はまかりならんと主張する人もいる。
デューデリジェンスは物件調査と価格調査を含んでおり、有償で請負っている為、鑑定評価類似行為に当ると考えるが、鑑定評価に当らないと解されているからか(公式的には確認されていないと思われるが)当該業務の担手は多種多様である。
仄耳するところによれば、不動産業者はもちろん、司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・興信所等も参加している。
報告内容・形式は千差万別であり、鑑定法に規定する要件を満たさないものがほとんどである。
固評路線価は、鑑定標準地の価格を基礎に統計解析して算定しているだけであるから鑑定評価に当らないとされ、航測会社がその大半を受注している。
しかし、本質的には地域分析を行ない、価格水準を判定しつつ全体のバランスを考慮しなければならず、とても単なる計算業務とは言えないと思うが、現実は数学的処理の方が不動産鑑定士の判断よりマシと思われており、近い将来固評路線価業務は我々鑑定士の手を離れることになるであろう。
価格調査業務は、机上評価を中心とし、A4サイズ1枚で3,000円~1万円位が相場である。
以上のように、我が業界を取り巻く環境は法制定時には予想し得なかった程広がりを見せている。