パラサイト北海道「アジアの中の北海道」 ~ Vol.8
2023.04.13
VOL.08 アジアの旅行者のために

 アジアの中の北海道は、自然環境・食材等のどれをとっても魅力的である。

 これらを目的に観光するアジアの旅行者は、増加を続けている。


 しかし、北海道における受け入れ体制はおそまつである。

 海外旅行を経験した道民は多いと思うが、アジアで食べる料理はそのほとんどが日本人用にアレンジされている。

 アジアの本格的料理は、日本人の口に合わないものも多い。

 つまり、日本の団体旅行ブームの時にアジア諸国の人々が気を遣ったのは、日本人の口に合うように自国の料理をアレンジしたことである。

 北海道人としては、アジアの人々に対してもっとホスピタリティを持つべきである。

 国内旅行者からも、エビ・カニ一辺倒の料理で飽きたとの意見も出る位である。

 アジアの人々の味覚を研究し、食べて良し、遊んで良しと認められるように努力すべきである。


 次に問題なのは、空港の受入体制と観光各地の外国語表記、案内の不足である。

 日本人が海外にいって驚くのは、どんな小さな土産品屋にいっても、カタコトの日本語であっても、日本語で対応してくれることである。

 ついつい会話もはずみ、あまり必要のないお土産品をどっさり買い込んだ経験のある人も多いのではないだろうか。

 観光立国を目指すなら、思い切った外国人受け入れ体制の整備をすることである。

 アジアの人々の団体旅行が一服すると、次は必ず個人旅行となる。

 その時には外国語対応のカーナビと、主要道路の外国語表記は必須である。

 郷に入れば郷に従へとばかり何もしないのであれば、観光立国は夢のまた夢である。

 ホテルやお土産品店・レストランでも、アジアの人々が気兼ねなく入れるようになれば、更に多くのアジアの人々が来道してくれるだろう。

 観光インフラはハードではなく、ソフトがその命運を握る。

 我々は、アジアの人々に謙虚に学ぶ必要があると思う。

 栄枯盛衰は世のならいである。

 アジアが何時までも貧しく、日本が何時までもアジアに君臨できると思うのは間違いである。

 驕れる者久しからずである。
2023.04.13 09:08 | 固定リンク | 鑑定雑感
パラサイト北海道「アジアの中の北海道」 ~ Vol.7
2023.04.06
VOL.07 「メイドインジャパン」ではなく「メイドイン北海道」のススメ

 今、アジア諸国において、北海道発の食材が元気である。

 例を挙げると、小泉総理も注目した帯広川西農協の長芋である。

 台湾へかなりの量が輸出されている。

 北海道のホタテの貝柱は、中国における中華料理の食材として、欠くことのできない地位を占めている。

 ナマコも北海道産は特級品として扱われている。

 最近TVで放映されたが、瀬棚町のタラは水揚げのほとんどが韓国へ直行で輸出されている。

 また、鮭の切身等も中国へ輸出されている。

 更に、日本米だけはアジアの人々の口に合わないと思っていたら、沼田町の雪中米が台湾で販売され、好評を博しているようである。
 
 道産米は、ササニシキやコシヒカリに一歩及ばないようであるが、台湾の人々からすれば、ササニシキやコシヒカリは粘りが強すぎて口に合わないということである。

 北海道内の水田は、減反につぐ減反で牧草地と化しているところもあるが、考えてみればもったいない話である。

 アジアの中で、北海道の米が受け入れられるならば、輸出用農産物として研究しても良いのではなかろうか。

 また、リンゴ・サクランボ・メロン・ブドウ等の果物にしても、その品質や鮮度管理は世界に類を見ない。

 千葉県の農協が香港で1パック1,200円のイチゴを売っている。

 今年は2~3万ケースを輸出しようとしている。

 デパートにいけば、1ケ1,000円のリンゴが売られている。

 これらの状況をみると、アジアは貧しいと考えるのは日本人の思い上がりかもしれない。

 シンガポール・フィリピン・中国・台湾・韓国等のアジア諸国には、実に豊かな人々が増えている。

 そして値段は高くてもより安全で、品質の高い食材を望んでいるアジアのニューリッチは多い。

 北海道は、日本国内で唯一食糧の輸出余力を持っている。

 そして食材天国でもある。

 余った牛乳を産業廃棄物として処分したとのニュースほど悲しいニュースはない。
 
 道産品を需要の乏しい本州市場に持って行く位なら、アジア市場へ持って行くべきである。

 北海道のLL牛乳の品質は、世界一と聞いたことがある。

 ならば、LL牛乳としてシンガポール・台湾・中国等の有名ホテルに売り込みに行く位の智恵が欲しい。

 生産者も作れば何とかなるのではなく、また農協等も国内事情にばかり目を向けないで、拡大を続けるアジアマーケットにおける北海道の農産物の優位性や輸出可能性の検討に本腰を入れてもらいたい。
2023.04.06 17:07 | 固定リンク | 鑑定雑感
パラサイト北海道「アジアの中の北海道」 ~ Vol.6
2023.03.31
VOL.06 北海道にあってアジアにないもの

 日本の中の北海道のイメージとしては、自然的条件(広さ・気候・風景等)・食材等と思われる。

 しかしながら、広さを除くと日本のどこにでも四季はあり、美味しい食べ物もある。

 したがって、観光という面だけでいえば、国内の他の地域を抜いてダントツの一位とはならない。

 また、これまでに述べてきたように、国内需要は長期的にはどうあがいても減少すると考えざるを得ないのである。

 しかし、目をアジアに向けると、北海道の長所を見つけることは簡単である。

 北海道にあってアジアにないものを思いつくまま挙げてみる。

  1.四季がハッキリしている

  2.大陸的な自然条件を備えている

  3.食材が極めて良好である

  4.リゾートインフラがある

  5.高度医療がある

  6.交通インフラ、特に道路網の整備が行き届いている

  7.避暑地にもなるし、冬季レジャーや温泉も楽しめる

  8.そして何より近くて時差が少ない

 アジアの人々が北海道以外でこれらの諸条件を備えた国に行こうとすれば、ヨーロッパや北米に行かなければならない。

 移動時間・時差等を考えると、北海道は遠くてもせいぜい5~6時間、時差も1~2時間であり、しかも夏季・冬季のいずれの季節も楽しめる。

 そしてアジアの人々は今、急速に経済力をつけている他、人口増加から需要は今後とも増加を続けるものと思われる。

 拡大するアジアのマーケットは、北海道の全てを受け入れても余りある程巨大である。

 縮小する国内マーケットの中では競争が激化し、弱肉強食となり、数多の生産者や企業は淘汰される。

 身近にある巨大なマーケットを十分に研究し、北海道を売り込み、北海道の可能性を引き出すことによって、自立への道が拓かれるのではないだろうか。
2023.03.31 09:00 | 固定リンク | 鑑定雑感
パラサイト北海道「アジアの中の北海道」 ~ Vol.5
2023.03.23
VOL.05 豊かになった人間の消費行動は世界共通

 日本が豊かさを感じるようになったのは、高度経済成長の昭和40年代以降であろう。

 戦後しばらくの間は、水道も十分ではなく、停電や給水停止も珍しくはなかった。

 皇太子のご成婚を機に白黒TVが一気に普及し、洗濯機・冷蔵庫・クーラー等ともに三種の神器といわれ、サラリーマンの憧れの的であった。

 その後に訪れたのがマイカーブームである。

 また、農協観光に代表される団体旅行が一世を風靡したのは、つい30年ほど前である。

 団体旅行は国内旅行から海外旅行に移り、世界のマーケットは日本人旅行客に熱い視線を送った。

 現在は団体旅行から個人旅行へ、神風ツアーから余裕のある旅行へと移り、確実に豊かになったことを実感させている。

 経済成長と共に所得が増大し、消費が拡大してきたのは、何も日本の専売特許ではない。

 昨今の東京に行くと、なんとアジア系の旅行客の多いことか。

 10年位前まではあまり目立たなかったが、昨今はシティホテルに泊まると大半がアジア系の旅行客であったりする。

 東京にいるのに海外にいるのかと錯覚させるほどである。

 豊かになった人間の消費行動は、万国共通である。

 冷蔵庫・TV・クーラー・洗濯機・オーディオ機器・マイカー・持家の次にくるのは、ファッションの高度化、オシャレ関係(化粧品等)、食物の高級化、旅行等である。

 事実、アジアの人々もこれまで以上にうまいものを食べ、旅行をし、レジャー等にいそしんでいる。

 アジアの人々は、かつて日本人が1億総中流を感じたように、中流意識を持つ人々が増えるだろう。

 旅行は非日常を体感する場であるから、海外旅行は今後ますます増加するであろう。

 その中でも、スーパーリッチの余暇の使い方は、日本人の想像の外である。

 日本人の現役世代が海外で1ヶ月も過ごすことは想像できないが、アジアのスーパーリッチはヨーロッパやアメリカのスーパーリッチと同じように、長期のヴァカンスを楽しんでいる。

 北海道赤井川村にあるヤマハリゾートキロロにも、サムソンの会長が多勢のお供を連れて長期間滞在しているということをヤマハの関係者から聞いたばかりである。

 アジアの中の日本、とりわけ北海道は、アメリカやヨーロッパと異なった文化や、アジアにない自然環境もあって、アジアの人々にとっては魅力的であるようである。
2023.03.23 10:00 | 固定リンク | 鑑定雑感
パラサイト北海道「アジアの中の北海道」 ~ Vol.4
2023.03.16
VOL.04 減少する国内マーケット、拡大するアジアのマーケット

 前号にみたように、北海道の人口は2030年には約470万人となり、2000年に比較して約100万人の人口減少が予想されているが、民間の研究機関であるアトラクターズ・ラボ㈱による「日本の将来推計人口」(2001年12月推計)によれば、2100年までの人口の推移は次のとおりである。



 これによれば、2100年の日本の人口は約3500万人で、ピーク時の約28%の水準である。2030年頃までは年間▲0.4%程度の減少で比較的ゆるやかな人口減少となっているが、それ以降は年間1%前後の減少率となっており、急速な人口減少が予測されている。

 他方、高齢化率をみると、2020年でほぼ30%となり、3人に1人が65歳以上、2050年には2.5人に1人が65歳以上となり、高齢者大国となる。

 北海道もこれと同様のトレンドにあると思われることから、2030年で100万人の人口減少で大騒ぎしている場合ではない。

 2100年の札幌市の人口が60万人以下になる可能性は高い。

 また、北海道全体でも約400万人以上の人口減少となるものと思われ、2100年の北海道の姿を想像することは恐ろしい。


 このような長期的な人口減少トレンドの中では、消費の拡大を望む術はないし、消費拡大どころか、どうあがいても現在の枠組みの中では北海道経済どころか日本経済そのもの自体の存立も危ぶまれる。

 我々は、人口減少時代にあっては拡大均衡の想定は困難であることを冷静に受けとめる必要がある。

 いくら気休めを言っても、人口減少に歯止めをかけられないのであれば、絵に描いたモチである。

 とりあえず今日・明日のことしか考えられない(私も含めて)が、パラダイムの変換をせまられているのは間違いない。

 これまでの政策の常識は、これからは非常識とならざるを得ないことを自覚して、発想の転換ができるよう努力すべきときと考える。


 ところで、視点をアジアに移すと、そこには人口爆発に伴う人口増加と経済発展による需要の増加があり、今後50年位はマーケットの拡大が期待できる。

 国内マーケットは縮小による縮小を続け、全ての生産は過剰となることが予想される。

 日本、ひいては北海道が生き残りをかけるとすれば、アジアのマーケットしかないことになる。

 これまでアジア諸国の1人当りの国民所得が低かったため、農産物等の労働集約的な商品の市場競争力は低かったが、これからは相対的な所得格差の縮小から北海道も農産物の輸出大国になる可能性は高い。
2023.03.16 09:05 | 固定リンク | 鑑定雑感

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