土地評価のウソ・ホント ~ Vol.7
2023.06.29
VOL.07 固定資産税評価額は適正時価。ウソ?ホント?

固定資産税評価額は、公示価格の3割引を前提に評価されている。

しかし、過疎町村では、固定資産税評価額の半値はおろか、タダでも要らないと言われ、相続放棄されたり、所有者不明となる不動産は多い。

固定資産税評価を巡る裁判は、大都市では良く見られるが、田舎では訴の利益もないので、放置される。

家屋の評価額は残価率2割のため、市場の実態と極端に乖離した価格となっている。

もっと問題なのは、固定資産評価基準に法適合性の概念がないことである。

違法建築であろうが、法令上の制限により宅地として利用できない、つまり建物の建築ができない土地であろうが、おかまいなしの評価となっている。

裁判所も、評価基準どおりに評価していれば適正な時価と推認しうると言っているが、法適合性のない不動産は、市場では受け入れてもらえない。

法令上の制限を無視した評価でも適正時価、というのはどう考えても無理があると思うが、鑑定業界からの反応はほとんどないようである。
2023.06.29 09:20 | 固定リンク | 鑑定雑感
土地評価のウソ・ホント ~ Vol.6
2023.06.22
VOL.06 公示価格は取引の指標。ウソ?ホント?

地価公示法では、土地の取引を行う者は、公示価格を指標として取引を行うように努めなければならないとしている。

しかし、地価公示法なんて誰も気にしていないので、公示価格を指標に取引する者はいない。

田舎では、タダで、しかも固定資産税の10年分を負担するから引き取ってもらえないか、と相談しても、要らないと言われることがあると聞いている。

ある税務課では、納税者から不動産を処分したいが、いくらなら売れそうかと相談されたが、固定資産税評価額の半分くらいではないかと答えたそうだ。

答えた方も答えた方であるが、納税者も評価額が高いのではと文句も言わずに、そんなもんかなと帰ったということであった。

大都市では、公示価格の倍の取引はザラで、中には公示価格の9倍という取引もあったと聞いている。

長期人口推計によれば、東京圏の人口はほとんど減少しないのに、地方は著しい減少が予想されている。

地価水準は人口に比例する傾向があるので、東京圏の地価は高く、地方は低下するばかりとなるが、実勢地価との乖離を放置していると、税負担は田舎ほど重くなり、税負担の不公平は更に拡大する可能性がある。

公示価格はもはや市場価値とは別モノで、課税のための評価の役割しか果していないと言えるのではないか。

それにしても現状は地方にとって辛い話であるが、市場価値と乖離した公示価格のツケは、やがて納税者に税負担という形で跳ね返ってくることを、国民は知るべきである。
2023.06.22 09:14 | 固定リンク | 鑑定雑感
土地評価のウソ・ホント ~ Vol.5
2023.06.15
VOL.05 取引事例の変動率は事前に分かる。ウソ?ホント?

取引事例比較法の適用の具体的な仕組みは、次のようになっている。


 取引事例価格×事情補正×時点修正×標準化補正×地域格差×個別格差=比準価格


取引事例は、土地鑑定委員会が全国的なアンケートにより調査している。

回収されたアンケートは、地価公示分科会と称する分科会に所属する担当不動産鑑定士に割り当てられ、事例カードが作成される。

その際には、駅距離とか道路の状況・画地状況等を調査することになるが、大変な作業となる。

特に地方ほど遠隔地に行かなければならないので、担当地域との往復だけでもその負担は大きく、そのせいか、地価公示作業の大半は事例カード作りとなっている。

それはともかく、取引価格が正しいとしても(明らかに間違っていると思われる回答もあるようだ)、取引事例の時点修正(変動率)をどのように判定するかである。

実際、町村によっては数件の取引しかなく、それぞれの取引事情等から年間どの位の地価変動があったか、分かるはずもない。

分からないので、取引事例の変動率は、市町村毎に、用途毎に、住宅地なら一律○○%、商業地なら一律○○%と処理している。

そうではない市町村があったらご容赦願いたい。

ところで、取引事例の価格がマーケットでどのように変動したかということが事前に分かるのに、その地域の公示価格の変動状況は鑑定しなければ分からないというのは、論理的に矛盾する。

疑問のある方は是非、開示されている地価公示の評価書の2枚目を良く良く見比べて欲しい。

取引事例比較法は、その方法自体に矛盾を抱えているが、誰も議論しようとしない。
2023.06.15 14:30 | 固定リンク | 鑑定雑感
土地評価のウソ・ホント ~ Vol.4
2023.06.08
VOL.04 公示価格は鑑定価格。ウソ?ホント?

今年も地価公示価格が発表された。

全国的にも地価水準の回復傾向が見られるのは好ましいと思われる。

何故なら、資産価値が下がって喜ぶ人はいないからである。

ところが、政府も国民もどういう訳か、地価上昇を好まないようである。

株式等の資産価値の上昇は誰も文句は言わないが、不動産だけは資産価値の上昇に文句を言うのは何故だろうか。

日本人のジェラシーには困ったものだ。買うまでは安い方が良いと言い、買ったら高い方が良いと言う人が大半である。

地価の上昇・下落で一喜一憂している国民にもウンザリである。

ところで、公示価格は二人の不動産鑑定士の価格を基に決定されていることになっている。

実際は、二人の不動産鑑定士の価格を基に、土地鑑定委員会が判定して公示価格として発表しているが、二人の価格が一致していれば鑑定価格=公示価格となるが、異なればその中間値を採用することが多いと聞いている。

この場合は、公示価格は鑑定価格ではないことになる。地価公示の評価書は開示されているので、発表された公示価格と二人の不動産鑑定士の鑑定価格をチェックしてみるのも一つの方法である。
2023.06.08 09:20 | 固定リンク | 鑑定雑感
土地評価のウソ・ホント ~ Vol.3
2023.06.01
VOL.03 取引がなくても土地価格は分かる。ウソ?ホント?

取引がなければ、実のところ価格は分からないと思うのは、素人の浅はかさということらしい。

取引がなければその町の事情に詳しい人を捜して取引事情を取材し、売買が成立するであろうと思われる価格を推定し、その価格に合うようなデータを集め、もっともらしく説明する他はない。

ある意味、虚構かもしれないが、他に方法がないので仕方がないと考える。

しかし、これは単に一人の評価者の意見ということにすぎない。

土地価格をコンピュータ上でシミュレーションして求める方法が確立されればより科学的とは言えるが、市場で生起する価格現象を、少ないデータ量で説明できるとは思えない。

何故なら、客観的なデータが大量に存在する為替や株式市場の価格を求めることができないからである。

不動産だけが一般財とは異なる市場だとでも仮定しなければ、無理と思われる。

一部の学者は可能と主張しているが、それならば公的評価は全て科学的に対応可能ということになる。

それなのに、科学的対応が未だ実現していないのは、何故だろうか?

公的評価には相当の予算が使われている。

実現すれば、国民の負担は激減するので、学者は本腰を入れて研究すべきと考える。
2023.06.01 09:00 | 固定リンク | 鑑定雑感

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