パラサイト北海道「人口減少と地価下落」 ~ Vol.2
2023.02.09
パラサイト北海道「人口減少と地価下落」 ~ Vol.2

VOL.02 人口減少と過剰インフラの行方

 平成15年現在の道路の保有状況は次のとおりである。



 2003年現在で北海道は国道で全国の約2.7倍、都道府県道で約2倍、市町村道で約1.6倍、高速道路で約1.7倍の道路を保有している。

 一度作った道路を壊したり廃止したりすることは、まずないであろう。

 とすれば、2030年における道民千人当りの道路保有率は次のとおり約20%増加する。





 ところで、道民一人当りの道路保有率が全国平均の約2倍に近いということは、単純にいえば道路の維持管理のために、全国平均の約2倍の費用がかかるということである。

 除雪費用を考えると、3倍になっているかもしれない。

 人口減少によって相対的に保有率は上昇するため、一人あたりの道路の維持管理費は増加しても減少することはない。

 他方、地方市町村は人口減少によって深刻な財源不足に陥ることは想像に難くない。

 将来的には、国道はともかく、道々・市町村道の維持管理を現状と同じレベルで行うことはできない。

 通行量の少ない道路の維持管理は後回しにされ、道路の損傷は拡大するものと思われる。

 更に深刻なのは、除雪の問題である。

 数キロメートルに1軒の家のための除雪は、費用対効果の上からも無理となる。

 人口減少により相対的に過剰となるインフラは、道路だけではない。上水道や下水道も同じである。

 これらのライフラインは道路と異なり、利用量が少ないからといって部分的に止めたり、維持管理を後回しにはできない。

 人口が半減すると、ライフラインの利用料金は倍になる。

 つまり、従来どおりの料金を維持するとすれば、不足分は一般会計から補てんしなければならないが、一般財源が不足しているためそれもできない。

 次に、平成15年の道民千人当りの教育施設並びに一校当りの生徒数をみると、次のとおりである。




 これによると、小中学校は全国の約1.4倍を保有しているのに、生徒数は7割にも満たない。

 文化施設・体育施設の合計は北海道1,34箇所、全国22,763箇所で、千人当りの保有率は北海道が0.24、全国が0.18で、全国の約1.3倍の施設を保有していることになる。

 これまでにみたように、北海道における公共インフラの利用効率は全国より相当劣り、その分道民一人当りの負担は大きくなることになる。

 2030年に向って100万人以上の人口減少が予想されているため、利用できない施設は増えても、減ることはない。

 国は平成の大合併を進め、合併前で約3300あった市町村を1000市町村、3分の1にまで減らそうとしている。

 北海道の合併比率は地理的条件から全国最低であるが、過剰インフラの保有からくる財政負担の増加は、否応なく合併を促すであろう。

 国の方針からすると、道内の市町村も3分の1になるとすれば約140の市町村がなくなり、140の役場庁舎が余ることになる。

 全部を潰すことはないにしても、人口減少から従来どおりの利用はできず、いわば10LDKの住宅に一人で居住するような状態になるものと思われる。

 維持管理費用を考えると、余った役場庁舎全体の利用・維持はできず、やがてはその全てが閉鎖されるであろう。
2023.02.09 09:35 | 固定リンク | 鑑定雑感

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