不動産を哲学する?―身の程知らずの哲学的迷走― ~ Vol.3
2023.08.17
VOL.03 不動産の哲学的再定義


 以上の認識・観念からすると、不動産の概念とは、物体と観念からなる複合的概念と再定義できるのではと考える。

 不動産をこのように定義すると、不動産に関する問題が多いのは、物体としての不動産と観念としての不動産の認識のズレが大きいことによるものと考えることができる。

 つまり、実体としての不動産(土地・建物)は五感で知覚することが可能であり、当事者相互でその状況を共有し、体感できるのに対し、観念としての不動産は、前述のとおり、法律的・社会的・経済的行為等の体感できない領域を含むことから、相互にその状況を知覚することはできない。

 言葉を換えると、実体としての不動産は体感することができるが、観念としての不動産は体感することができないということになる。

 したがって、不動産という概念は、知覚可能な領域と知覚不可能な領域を含む複合的概念であるから、同じ不動産をみても異なる認識に至る可能性を否定することはできず、そのため問題が生じ、トラブルが発生することにもなる。

 観念そのものは、ある意味その人自身の全人格的認識の反映であるから、生まれも育ちも性別も異なる多様な人間相互の観念が、必ずしも一致するとは限らないということである。

 不動産という言葉を、特に意識することなく使用しているが、不動産とはこのような側面というか、内面性を持つ後天的に獲得した複合的概念ではないかということについて考えることも必要なのではと思っている。
2023.08.17 09:10 | 固定リンク | 鑑定雑感

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