不動産を哲学する?―身の程知らずの哲学的迷走― ~ Vol.4
2023.08.24
VOL.04 不動産と資格制度

 以上のように、不動産は、物体としての知覚可能な領域と、観念としての知覚不可能な領域を含むため、人によってはその認識にズレを生じさせることが多い。

 そのため、可能な限り不動産に対する認識のズレを少なくさせることが社会的に要請されると考える。

 つまり、不動産に関する行政法規が多いのは、土地・建物の利用者相互の利害調整を図ることが必要であることにほかならない。

 人口密度が極めて低かった時代には、利用者相互の利害が発生する可能性は低いので、法的規制の必要性がなかったということができるのである。

 ところで、近代化により、都市化が急速に進み、それにつれて不動産に関するトラブルも急増している。

 そのため、不動産に関する行政法規が数多く作られてきたが、一般市民が数多くのこれらの法規を全て理解することは困難である。
 そのためには、一般市民の観念と行政法規との認識のギャップを埋める必要が生じるが、そのギャップを埋めるための手段の一つが、資格制度と考える。

 しかし、その資格制度も多種多様な行政法規と観念される認識ギャップの多様性から、細分化されている。

 民間資格も含めて、一体どれだけの資格制度があるのか、正確に知る人は少ない。

 不動産にかかわる業務は多種多様であるので、特定の業務に応じて資格制度を細分化することはやむを得ないと考えるが、そのことにより、同一資格者内部や他の資格者との競合領域において観念のズレが生じることも起こりうることになる。

 実体については、科学技術の進歩によってこれまで知覚不可能なものであったものが知覚可能となる可能性は高いが、観念の世界は時代・人種・国・文化・性別・年齢等によっても異なる可能性が高いので、相互の認識ギャップを埋めることは困難と思われる。
2023.08.24 09:15 | 固定リンク | 鑑定雑感

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