不動産を哲学する?―身の程知らずの哲学的迷走― ~ Vol.2
2023.08.10
VOL.02 不動産とは何か?


 不動産とは、一般的には土地・建物のことと認識されている。

 広辞苑によれば「不動産とは物のうち容易にその所在を変え難いもの。民法上、土地及び建物・立木のような土地の定着物」と説明されている。

 ところで、民法には不動産という用語は出てこない。

 土地については、民法第207条で所有権の範囲に関連して出てくるが、建物についての条文はなく、不動産そのものの定義はない。

 民法に限らず、不動産に関連する法律は多いが、不動産とは何かを定義している法律は少ない。


 たとえば、不動産登記法という法律をみると、その第1条に「登記は、不動産の表示又は左に掲げたる不動産に関する権利・・・・・・以下略」としているだけで、不動産そのものについての定義はない。

 不動産鑑定評価に関する法律第2条では、「不動産の鑑定評価とは、土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し・・・以下略」としていることから、この法律では、不動産とは土地・建物の総称ということになる。

 不動産の表示に関する公正競争規約第4条では、珍しく「この規約においては「不動産」とは、土地及び建物をいう。」と定義している。

 全ての法律を調べた訳ではないが、不動産を包括的に扱う法律では、不動産の定義をしていないが、個別的・具体的に扱う法律では不動産を定義しているように見受けられる。

 つまり、不動産とは何かは自明であるから、ことさら定義する必要はないということであろうと思われる。 


 ところで、不動産イコール土地と建物とすることに異論はないが、同じ観念として扱うことには些か抵抗を感じるので、若干の考察を加えてみることとする。

 土地・建物という概念は、どちらかというと物体そのものを示すのではないかと思われる。

 つまり、土地・建物という概念と不動産という概念を一緒にはできないと思うのである。

 建物はさておいて、土地は人類が誕生する前から存在している物体である。

 これに対して、不動産とは、土地を人為的に区分し、それを個別的に占有・利用する等の行為を伴って、はじめて成立する概念ではないかと思うのである。

 言葉を換えれば、土地・建物とは、原始的な状態における物体としての認識を指し、不動産とは、認識された物体と法律的・社会的・経済的行為という観念が合体して認識された状態にある土地・建物と考えることができる。
2023.08.10 09:15 | 固定リンク | 鑑定雑感

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