評価基準の罪と罰 ~ Vol.6
2022.05.19
VOL.06 評価を巡る争い

固評基準にしても基本通達にしても、標準画地の価格を基礎として、後は決められた方法で計算するだけとなっている。

 その結果が適切な時価の範囲にあるかどうかは、争わない限り分からない。

 鑑定評価は、画地計算をする訳ではなく、最有効使用を前提として評価するが、固評基準も基本通達も、最有効使用が何かは考えていない。

 結果として、市場に受け入れてもらえそうにもない評価となることがあるが、計算上の誤りが無い限り、これをヒックリ返すことは無理のようである。

その結果、鑑定士の出番となるが、そもそも固評基準にも基本通達にも最有効使用の概念がないので、訴訟をやっても噛み合うことは少ないように思われる。

 裁判所も、何が本当の時価か分からない。

裁判所は、固評路線価は公示価格の3割引、相評路線価は2割引を前提としているので、余程の事情がない限り、誤差の範囲として、納税者側の鑑定を採用することは少ないと聞いている。

最高裁判決によれば、固評基準または基本通達に拠ることができない特別の事情がない限り、基準どおり評価された価額は適法な時価と推認し得るとしているので、鑑定評価では、前二者の基準に拠ることができない特別な理由を指摘することが必要となる。

 ただ単に、市場における時価を議論しても、議論は噛み合わず、ムダであるとしか言えない。

その結果、訴訟となると、国・市町村側の鑑定士と納税者側の鑑定士の鑑定評価を巡って激しいバトルとなるが、特別の事情がない限り基準適合説の採用となるため、納税者勝訴となる確率は低いということになる。

納税者にしてみると、市場で売れない価格が適正時価と言われても納得できないので、不当鑑定だと申立てる納税者が出てくることがある。

かくて、争いは裁判所から法廷外の争いとなり、場外乱闘の様相を呈することになる。
2022.05.19 09:15 | 固定リンク | 鑑定雑感

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