鑑定雑感 不動産鑑定士 堀川裕巳 コラム
 
◆ 不動産調査と役所の壁 ◆ ー 法治国家日本の不思議 ー
 
VOL.01 不動産調査について VOL.02 法務局における調査〜今は昔 VOL.03 地図混乱地域と調査
     
VOL.04 役所調査と不動産鑑定士の調査権 VOL.05 法治国家日本の不思議  
 

◆ 不動産調査と役所の壁 ◆
ー法治国家日本の不思議ー

 

VOL.03 地図混乱地域と調査

 測量関係の人にとって、「地図混乱地域」という用語は別に珍しくも何ともないと思われるが、不動産鑑定士にとっては馴染みは少ない。

 一般的に地図混乱地域とは、法務局に備え付けられている地図(所謂公図)と、現地の各筆の位置・形状が著しく異なっている地域とされているが、その原因は様々で判然としない。

 ところで、地図混乱地域は全国的には相当数にのぼると思われるが、以下は筆者が長い不動産調査の経験の中でも、これほど極端なケースは初めてであったので、北海道における地図混乱地域の代表として紹介する。

 これまで、北海道は本州と異なり、比較的新しく開発された土地であり、歴史の古い東京・大阪等と異なり、明治政府により計画的に開拓されたことから、地図の混乱の程度は低いと個人的には考えてきた。

 しかし、実際に極端なケースに当たり、物件の確定・確認に困惑したのである。

 下記の図面は同一の場所であるが、これを比較すると、法務局備え付けの図面は税務課の作成した図面と異なり、各筆の位置が大きくズレている他、地番の記載がない箇所が多い、字界が異なる等、現地調査に当たって全くもって使用に耐えない図面であることがわかる。税務課の図面は、分筆図を集成し、調整したもので、現況測量を基に作成したものではない。

 しかしながら、個人的には税務課の図面の方が現況にほぼ近いと思われたが、確信がないので実地調査に当たって、周辺の土地、特に国有地・市有地の実測図等を捜し、それを入手して検討した。その結果、税務課の図面の方が確からしいと確認できたのである。周辺土地が実測により分合筆され、その図面が登記申請添付されているにもかかわらず、その成果が法務局備え付けの図面に全く反映されていないのは、一体何故なのであろうか。

 現在はインターネットにより、地図の閲覧が可能となっているが、今回のこのような公図に遭遇すると、唖然とするばかりである。日本の国土情報の整備の遅れを再認識させられたが、今回は税務課がきちんと対応していたから良かったものの、そうでなければ一体どうなっていたのやら思う他はない。

 いずれにしても、法務局にある図面が正しいという保証はないということを肝に銘じ、ゆめゆめ調査に手抜かりのないよう気をつけなければと思ったものである。

 
  VOL.04 役所調査と不動産鑑定士の調査権
 
◆過去のコラム記事はこちら
 
◆ ヒラメと徒弟制度と実務収集 ◆
 
VOL.01 減点主義の功罪 VOL.02 法令遵守とマニュアル VOL.03 ヒラメと法令遵守
     
VOL.04 実務修習と徒弟制度  
 
◆ ホモ・エコノミクスとゴルゴ13 ◆
 
VOL.01 鑑定理論と不動産取引の現場 VOL.02 現実社会と標準的経済学の世界 VOL.03 経済は感情で動く
     
VOL.04 ヒューリスティクスによるバイアス VOL.05 ホモ・エコノミクスとゴルゴ13  
 
◆ 組織は最大犠牲点に向かう ◆ ー 本当は恐い日本人 ー
 
VOL.01 東日本大震災と日本人の行動 VOL.02 村八分という村の掟 VOL.03 日本における村社会
     
VOL.04 本当は恐い日本人 VOL.05 組織は最大犠牲点へ向かう  
 
◆ 節約は美徳か悪徳か? ◆ ー 蜂の萬話と相互律が示唆するもの ー
 
VOL.01 絶対的なるもの VOL.02 相互律について思うこと VOL.03 節約は美徳か悪徳か
 
VOL.04 蜂の萬話ー私悪すなわち公益 VOL.05 蜂の萬話ー私悪すなわち公益2  
 
◆ 七面鳥と不動産鑑定士 ◆ ー ガリレオとブラックスワンの世界 −
 
VOL.01 鑑定評価の科学性 VOL.02 合理性と数学 VOL.03 ブラックスワンの世界
 
VOL.04 予測可能と予測するのは可能か VOL.05 千と一日目の七面鳥