測量関係の人にとって、「地図混乱地域」という用語は別に珍しくも何ともないと思われるが、不動産鑑定士にとっては馴染みは少ない。
一般的に地図混乱地域とは、法務局に備え付けられている地図(所謂公図)と、現地の各筆の位置・形状が著しく異なっている地域とされているが、その原因は様々で判然としない。
ところで、地図混乱地域は全国的には相当数にのぼると思われるが、以下は筆者が長い不動産調査の経験の中でも、これほど極端なケースは初めてであったので、北海道における地図混乱地域の代表として紹介する。
これまで、北海道は本州と異なり、比較的新しく開発された土地であり、歴史の古い東京・大阪等と異なり、明治政府により計画的に開拓されたことから、地図の混乱の程度は低いと個人的には考えてきた。
しかし、実際に極端なケースに当たり、物件の確定・確認に困惑したのである。
下記の図面は同一の場所であるが、これを比較すると、法務局備え付けの図面は税務課の作成した図面と異なり、各筆の位置が大きくズレている他、地番の記載がない箇所が多い、字界が異なる等、現地調査に当たって全くもって使用に耐えない図面であることがわかる。税務課の図面は、分筆図を集成し、調整したもので、現況測量を基に作成したものではない。
しかしながら、個人的には税務課の図面の方が現況にほぼ近いと思われたが、確信がないので実地調査に当たって、周辺の土地、特に国有地・市有地の実測図等を捜し、それを入手して検討した。その結果、税務課の図面の方が確からしいと確認できたのである。周辺土地が実測により分合筆され、その図面が登記申請添付されているにもかかわらず、その成果が法務局備え付けの図面に全く反映されていないのは、一体何故なのであろうか。
現在はインターネットにより、地図の閲覧が可能となっているが、今回のこのような公図に遭遇すると、唖然とするばかりである。日本の国土情報の整備の遅れを再認識させられたが、今回は税務課がきちんと対応していたから良かったものの、そうでなければ一体どうなっていたのやら思う他はない。
いずれにしても、法務局にある図面が正しいという保証はないということを肝に銘じ、ゆめゆめ調査に手抜かりのないよう気をつけなければと思ったものである。
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