鑑定業界を取り巻く現状と課題 ~ Vol.1
2024.09.26
VOL.01 鑑定業界を取巻く現状について

 法律によれば「不動産の鑑定評価」とは不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することであり、不動産鑑定とは自ら行うと他人を使用して行うとを問わず、他人の求めに応じ報酬を得て不動産の鑑定評価を業として行うことをいうとされている。

 ところが、簡易鑑定を追認した昭和50年代後半頃から簡易鑑定が普及し、昨今の簡易鑑定の認知度や普及率には目を見張るものがある。

 また、鑑定評価の類似業務としては、デューデリジェンス・価格調査・固評路線価評価・DCF法による収益価格オンライン算定システム・補償コンの土地評価業務等があり、所謂正規の鑑定評価以外の業務は百花繚乱である。


 ところで、補償コンの土地評価業務は、公式的には鑑定評価に当らないとされているが、昨今は個人情報保護法の影響で取引事例が入手できにくくなっている為、鑑定業の登録をしていない補償コン業者は業務の遂行に困難を来たしている。
 その為、一般鑑定業者に事例提供を求めてくるケースが出てきているが、その一方でこのような事例提供は目的外利用であるから、提供はまかりならんと主張する人もいる。

 デューデリジェンスは物件調査と価格調査を含んでおり、有償で請負っている為、鑑定評価類似行為に当ると考えるが、鑑定評価に当らないと解されているからか(公式的には確認されていないと思われるが)当該業務の担手は多種多様である。

 仄耳するところによれば、不動産業者はもちろん、司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・興信所等も参加している。
 報告内容・形式は千差万別であり、鑑定法に規定する要件を満たさないものがほとんどである。

 固評路線価は、鑑定標準地の価格を基礎に統計解析して算定しているだけであるから鑑定評価に当らないとされ、航測会社がその大半を受注している。
 しかし、本質的には地域分析を行ない、価格水準を判定しつつ全体のバランスを考慮しなければならず、とても単なる計算業務とは言えないと思うが、現実は数学的処理の方が不動産鑑定士の判断よりマシと思われており、近い将来固評路線価業務は我々鑑定士の手を離れることになるであろう。

 価格調査業務は、机上評価を中心とし、A4サイズ1枚で3,000円~1万円位が相場である。

 以上のように、我が業界を取り巻く環境は法制定時には予想し得なかった程広がりを見せている。
2024.09.26 16:47 | 固定リンク | 鑑定雑感

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