民間競売制度の導入を考える ~ Vol.6
2024.08.01
VOL.06 現況主義について

 競売評価は、差押え時の現状に基づいて評価しなければならないとされており、評価条件を付すことができない。

 ところで、差押え時の不動産の現況の確定とは、一体何をどこまで確定すれば良いのかは判然としない。

 民事執行法では、評価書の記載内容として不動産の所在する場所の環境の概要、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限の有無、内容又、土地については地積、建物については床面積・種類・構造等が例示されているが、評価人は何をどこまで調査・確定しなければならないかは何も規定していない。

 宅地建物取引業法では、法第35条において重要事項の説明義務を明示しており、その内容も詳細に規定している。

 民事執行法ではこのような詳細な規定がないため、例示されている基本的な事項は別にして、調査事項の範囲・内容等の確認は評価人によって様々である。

 その為、誤解を生ずることも少なくない。

 また、調査・説明範囲が明定されていないため、物件によっては与えられた時間内ではどうしても調査を終えることができない場合が出てくる。

 他方、調査事項が明定されていないため、基本的な部分のみの調査で終わらせても、執行裁判所はそれが十分な調査を踏まえたものであるかどうかを確認することはできない。

 したがって、確認不十分なまま売却され、競落人が改めて調査した結果重大なミスが発見されることもある。

 話はやや逸れてしまったが、評価書の記載内容の例示はあるが、現況の確定とは何かについてはもっぱら解釈論に委ねられている。

 判例によれば、厳格な現況確定を期待しているものから、時間と費用が限られているのであるからその範囲内での現況確定で良しとするものまで、見解は必ずしも統一的ではない。

 これらの問題が物件の確定作業の長期化につながり、早期処分の足かせになっていることは否定できない。
2024.08.01 09:18 | 固定リンク | 鑑定雑感

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