士・業同一性障害を考える ~ Vol.3
2022.07.21
VOL.03 不動産鑑定評価と鑑定評価書発行の権限

 鑑定評価は不動産鑑定士のみが行えるが、業者登録しなければ、評価書の発行ができない。

 したがって、評価書の発行権限は、業者の代表者にあることになる。

 ところで、資格者個人の意見と判断を表明した評価書の取扱いの最終権限は業者の代表者となるが、国土法施行令第9条の地価調査や固定資産評価基準における標準宅地については、不動産鑑定士の鑑定評価を求め・・・と規定されており、業者の発行する鑑定評価書という文言は見当たらない。
 
 地価公示法では、不動産の鑑定評価に関する法律の適用除外規定があるため、評価書の発行権限は、資格者個人にあることになる。

 しかし、それ以外の法律や固定資産評価については、特に除外規定がないので、同法の適用対象となる。

 前記の地価調査は、除外規定がないにも関わらず、長らく個人名で評価書を発行してきた経緯がある。
 10年位前から(記憶が定かではないが)業者名を記載するようになったが、様式は地価公示と同じであるので、厳密にいうと法律的には問題があると考える。

 また、固定資産評価における標準宅地の鑑定評価も同法の適用対象となるので、ガイドラインに完全には準拠していない現行様式は、問題になると思われる。

 相続税評価における標準宅地の鑑定評価書の様式も、同じ問題を抱えている。

 仮に、一般からの依頼に対し、総務省や国税の標準様式を使用して評価書を発行したら、一体どういう問題が生じるのであろうか。

 これらの様式を利用した評価書の発行は一切認めないという根拠規定があるのかどうか分からないが、他の省庁が示した様式は、著作権が国にあるので使用してはならないということになるのかなとも考えられる。

 いずれにしても、不動産鑑定士という言葉が独り歩きしているため、不動産鑑定士は士業と誤解しているケースが多く見られる。
 
 事実、他の士業団体の人に、不動産鑑定士は業者法内の資格者であり、宅地建物取引士と同じですと言ったら驚いていたことを思い出すのである。

 ある時は士業、ある時は業者と立場を使い分け?、あるいは分からないため、発注者からは業者として扱われ、問題が起きると個人責任が問題にされる。

 個人業者は、業者イコール資格者個人のため、特に区別ができないでいる。

 そのため、問題が起きると余計に混乱することになる。
2022.07.21 10:20 | 固定リンク | 鑑定雑感

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