改正個人情報保護法と不動産取引情報 ~ Vol.2
2022.03.25
VOL.02 オープン化されていない不動産取引情報

 一方、不動産取引情報は、これまで個人情報に該当し、一部の人間しか使えなかったが、これをどのように考えたら良いのであろうか。

 個人情報の定義によれば、取引された不動産の所在・地番・地積・取引年月日・価格は、個人情報に該当するとは思えない。

 しかしながら、同法2条1項では、

 『他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することとなるものを含む』
 とされているため、一般公開されている登記情報で容易に所有者の住所・氏名を確認することができることから、不動産取引情報は個人情報に該当するといえることになる。

そうすると、不動産取引情報をビッグデータとして利活用することは、事実上不可能となる。

 くどいようだが、不動産は不動産登記法により、その所在・地番・地目・地積が、建物については、家屋番号・床面積・築年月日等が、それぞれ所有者の住所・氏名・登記原因・抵当権等の内容とともに、何人にも公開されている。

したがって、他の情報に比較すると、匿名加工された不動産情報とはいっても、公開情報により所有者の住所・氏名を識別することは容易である。

 識別容易であるから個人情報になるとすると、結果的にわずか数千人の特定の団体の構成員しか利用できないことになる。

 ビッグデータの利活用やAIの発展・活用等を考えると、不動産取引に関する情報を個人情報として扱うことは、国家的損失と言わざるを得ない。

 本誌で紹介されている韓国鑑定評価協会の広報誌によれば、韓国内においても、不動産取引情報の扱い方について問題提起されている。

それによれば、我が国と同じような情報公開のあり方に対し、住所・地番が抜けた実取引価格は、どんな不動産データとも結合できず、展示行政の見本だとして、手厳しく批判している。

 詳しくは分からないが、個人情報の扱い方に厳しいアメリカでさえも、不動産取引情報のオープンデータ化は進んでいる。
2022.03.25 09:00 | 固定リンク | 鑑定雑感

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