空家とコンパクトシティと試される住民意識 ~ Vol.1
2021.11.04
VOL.01 ニュータウン・オールドタウン・ゴーストタウン


 昭和40年代に始まった住宅ブームは、高度経済成長に伴う所得の向上による住宅購入意欲の増大と、政府による住宅金融政策等が相まって、土地神話と言われた程の持続的かつ大幅な地価上昇をもたらした。

 このままでは土地が買えなくなるとの国民の危機的意識もあって、昭和49年に土地取引の規制を目的とした国土利用計画法が制定された。

 その後のオイルショックもあって、一時地価上昇も沈静化したものの、昭和60年頃からダブついたお金が再度土地に向かい、バブルが発生したが、強力な金融政策によって平成3年頃をピークに、バブルは崩壊した。


 ところで、住宅ブームに乗った団塊世代は、夢のマイホーム取得へと突き進み、それによって住宅地も郊外へ郊外へと広がり、都心までの通勤時間が2時間というニュータウンが首都圏を中心にあちらこちらに出現した。

 これらのニュータウンの住人は、30歳前後の若い人が大半であった。

 あれから40年、かつての若い団塊世代も、高齢者の仲間に入ってしまったのである。

 戦後の食べることにも苦労していた世代が集団就職で上京し、庭付き一戸建てを人生の全てと錯覚していたとしても、誰も責めることはできない。

 しかし、定年退職後に待っていたのは、資産価値の著しく減少したマイホームであった。

 老朽化したマイホームを建て直ししたいが、資金もなく、都心に働きに出て行った子供達も帰ってくることもない。

 階段の上り下りもしんどくなり、老々介護が限界となり、老健施設や病院のお世話になりたいが、そこも老人で溢れ、順番待ちとなっている。


 これまでの街づくりで一番問題であったのは、同世代に対応した街づくりであったことではないかと思っている。

 つまり、居住者の高齢化に伴い、夢のニュータウンもオールドタウンになったにすぎないからである。

 オールドタウンを構成する老朽家屋は、気がつけば売れない・貸せない・壊せないの三無い不動産となり、空家が大量に発生しつつある。

 人口が増加していれば、こんなことにはならなかったはずであるが、政府による人口抑制策もあって(今となっては信じられないが)、気がついたら少子高齢化で、全国に空地・空家が大量に発生してしまったのである。

 現在、官民あげて少子高齢化対策に本腰を入れようとしているが、つい40年程前には人口抑制策が取られていたことを、皆忘れてしまっているのである。

 少子高齢化は、人口抑制策の結果かもしれないということを、検証する必要があると考える。

 いずれにしても、オールドタウンが、あと数十年もしないうちにゴーストタウンにならないことを祈るばかりである。
2021.11.04 16:22 | 固定リンク | 鑑定雑感

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