ネットサーフィン鑑定 ~ 鑑定評価書作成業(?)の行方  Vol.2
2021.04.15
VOL.02 国土情報のインフラ整備と不動産調査 

前述したように、我が国における地籍・道路・上下水道・河川・家屋等、国土の根幹をなすこれらの基礎的な国土情報の内容・精度・取扱い方等はバラバラであるのが現実である。

縦割行政の中ではこれらの情報を横断的に整理・標準化する等ということは、どうやら夢の又夢のようである。

戦前、陸軍と海軍の兵器の規格が不統一で互換性がないため、前線でどれ程苦労したか良く理解されていないらしく、戦後の行政に教訓として全く生かされていないのは残念という他はない。

民間部門の工業の世界では、製品の品質はさておくとしても、規格化・標準化がマーケットを制することになる。

したがって、いくら品質が良くても大量生産の世界では、規格化・標準化の競争に負ければマーケットからの退場を余儀なくされる。

かつて、ビデオレコーダーの規格・標準化競争の中で、ソニーのベータ方式はその品質が良かったにもかかわらず、VHS方式に負けてしまった。

しかしそのVHS方式のビデオも、8ミリビデオの登場でその影は薄くなってしまったが、その寿命は短く、DVDレコーダーの登場となった。

そして、DVDの記録方式を巡って東芝とソニーの激しい競争の結果、ソニーのブルーレイの完勝に終わり、東芝は撤退した。

他方、国土に関する行政情報を見ると、強力な中央集権国家となっていながら、その中身はつまるところ公共事業の配分を巡る権力と金の集中でしかなかったと言わざるを得ない。

話が少しズレたが、国土情報整備の基本方針がなく、規格化・標準化も不十分であったため、47都道府県1727市町村における行政事務をみると、帳票一つ取ってもバラバラで、見づらいことこの上ない。

まして国土情報の基本となる各種図面の精度・内容・取扱いがバラバラとあっては、不動産の調査・確認資料としては問題である。

これらの図面の中には、精度的にはマンガレベルのものもあり、精度以前の図面という他はない。

個人的にはどうしてこうなっているのかは理解できない。

しかし考えてみれば、行政情報の精度やその内容がバラバラであるからこそ、専門家と称する人種が必要とされるのかもしれない。

将来、全ての国土情報の規格化・標準化がなされる時代が来たら、専門家の活躍する機会は減り、専門家の大半は失業するのかもしれない。

とすれば、我々のような職業のある部分は国土情報のインフラ整備の立ち後れに咲いた徒花なのかもしれないと思う他はない。
2021.04.15 16:07 | 固定リンク | 鑑定雑感

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