不動産鑑定士はエスパー!! Vol.4
2020.05.07
VOL.04 鑑定評価の専門性について

 鑑定評価は、専門家の仕事であることに疑いはないものと考える。
 しかし、以上を見ると何が専門なのか解らなくなってしまう。
 鑑定評価に必要とされる個別の分野毎に見ると、不動産鑑定士はとても専門家とはいえない。
 悪く言えば、雑学の大家?とでも言うべきなのであろう。
 筆者も含めて、各分野毎にその道の専門家と互角に立ち向える不動産鑑定士は一体どの位いるのであろうか。

 一般の不動産鑑定士にとって、各分野の全てにわたってエキスパートになることはできない。
 各分野について1年ずつみっちり勉強しても、20~30年位かかるであろうし、その勉強をしている間に昔の勉強は忘れるし、世の中はどんどん変化し知識も陳腐化する。

 したがって、本当の専門家になるためには、一つの分野について数10年単位の経験が必要と思われる。

 現在の鑑定業界の中では、評価に必要な各分野について相当の経験を積むということは、ほとんど不可能であることは前述のとおりである。
 また、入札により数万円で大量の評価をするような状況下では、とても国民に尊敬されるような仕事はできない。

 昨今は裁判所でも公認会計士に不動産鑑定をさせているケースもある他、デューデリジェンス業務等は不動産業者や土地家屋調査士等も行なっている。
 世の中は別に不動産鑑定士でなくても依頼者の注文に沿った仕事ができれば誰でもいいと考えているようである。
 
 これらの状況をよくよく考えると、鑑定評価の専門性は他の専門職種に比較すると極めて低いということが実感される。
 将来取引事例がアメリカのようにマーケットデータブックとして誰でも入手できるようになれば、経済学者や数学者が鑑定評価をするような時代がくるかもしれない。
 もしそういう時代が来たら、資格は何の意味も持たない。
 取引事例の呪縛から解き放たれた時、我々に一体どのような専門性が残されるというのであろうか。
2020.05.07 13:33 | 固定リンク | 鑑定雑感

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