ホモ・エコノミクスとゴルゴ13 Vol.2
2013.04.05
VOL.02 評価手法と経済分析の限界

 取引事例比較法・原価法・収益還元法のいずれも刻一刻と変化する市場の動向に対応できていない。
 もっとも、市場の変化が要因の変化を伴っているのかどうかさえわかっていないのであるから、結局は市場構造に変化はないという前提で考えるほかはない。

 評価基準の改正によって、比較的動的な分析が可能とされるDCF法であっても、結局は過去の延長上で分析する他はないので、静態的分析の域を出ていないことになる。
 人間の限られた能力では、刻々と変化する市場条件の無限とも考えられる組み合わせを1秒間に数万回も繰り返し計算し、アルゴリズム的に分析することは不可能である。

 一方、経済分析の大半は不動産市場よりはるかに単純な市場を相手にしているが、未だにその分析技術は確立していない。
 もっとも、経済分析が完璧であれば経済対策に困ることはないのであるから、市民はとっくに最大多数の最大幸福を実現し、平穏な生活を手に入れていなければならないことになる。

 ところが、現実の生活はこれと正反対であり、未だに最大多数の最大幸福を実現するに至っていない。

 つまり、比較的単純と思われる市場(株式・債券・為替市場等)でさえ静態論的にも動態論的にも分析はできていないのであるから、不完全極まりない不動産市場を科学的に分析・アプローチする方法がないのは至極当然である。

 したがって、鑑定評価論が完成されたものではないことは当然であり、それにしがみつくのはある意味で滑稽でもある。

 現実の不完全な不動産市場をダイナミックに分析し、より客観性を高めることは必要ではあるが、現実の状況下では現実不可能と思われるほどハードルは高い。
2013.04.05 09:27 | 固定リンク | 鑑定雑感

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