担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.10
2025.02.20
VOL.10 民間競売導入の前提条件と今後の動向

 以上を総合すると、現時点で想像できる条件は少なくとも次の二つは必須と考える。

  1.債務者・所有者・その他の利害関係人(賃借人等)が納得して協力してくれること。
  2.配当計算が不要な物件であること。

 1の条件がクリアーできなければ、結局執行官にお願いする他はない。

 2の条件は、土地・建物の抵当権が同一の債権者であることを意味する。
 もし異なる抵当権があれば、配当計算という問題が生ずるため、現況調査と評価人による評価は必須となる。

 つまり、配当計算のために内訳価格の評価が必要となるからである。

 民間競売で評価するとなれば、評価基準や評価人の教育訓練が必要となるが、そんなことに時間をかける位であれば、現行の司法競売でも十分ということになる。

 したがって、民間競売で対応できる案件は極めて少なくなるものと思われ、法改正の実効性に疑問が残る。

 ところで、先の二つの条件が整っている物件は、現在でも司法競売ではなく任意に売却されている。

 つまり民間競売にすぐに移行できるような物件は、裁判所の手を煩わすことがないということである。

 昨今の競売事件の減少をみるにつけ、世の中は既に民間競売にできるものは民間競売に移行しているということを実感せざるを得ない。

 申立から売却までに半年から1年で、しかも90%超が売れているということを考えると、民事執行法を改正して民間競売制度を導入する必要性を感じることはできない。

 個人的には民間競売を否定するものではないが、不動産の取り扱いや金融制度・文化等の相異から、先に述べたように必ずしも日本になじまないものと思われる。

 仮に導入するとしても、関連法整備の煩わしさや実効性等を勘案すると、結局のところ労多くして効少なしというところに落ち着くのではないかと考える。

 以上、筆者の乏しい知識で思いつくまま述べたため、的外れのところも多々あると思われるが、司法競売の現場で伸吟している評価人の愚痴としてご容赦を乞い願うものである。
 

(2006年8月 Evaluation22/「担保執行法制の改正と競売の今後の動向」)

2025.02.20 10:23 | 固定リンク | 鑑定雑感

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