評価基準の罪と罰 ~ Vol.7
2022.05.26
VOL.07 評価基準の罪と罰

以上のように、適正時価を求める基準が三つもあり、それぞれが各省の意向を反映して少なからず相異があるため、適正時価を巡って争うことになる。

 土地基本法第16条では、公的評価の均衡化・適正化を図るとされているが、現在のような状況の中で、評価の均衡化・適正化が達成されていると断言することは、無理なのかもしれない。


ところで、何故に土地の適正な地価を求める基準が三つも必要なのだろうか。


 そのヒントが、百田尚樹氏の「戦争と平和」にあったので、紹介する。

この本によれば、戦前の陸軍と海軍は仲が悪いため、戦略・戦術・武器生産等で相互に研究・協調することは無かったとのことである。

 武器については互換性がないため、相互に融通することができず、ただでさえ補給概念の無い日本軍の兵士が、戦場という極限の現場でどれ程苦労されたのか、考えるだけでも胸が痛む。

 作戦を指揮した参謀の大半は、陸大・海軍大を卒業したキャリアで、現場を知らない指揮官程迷惑なものはないが、試験に秀でた能力を発揮する人達が省益を前提に考えているとすれば、戦前と同じような縦割主義・セクト主義のままとなり、評価を巡る根本的な問題が解決する道筋は見えてこないと思われる。

 路線価の10倍の取引も適正な時価というのなら、不動産の類型毎に適正時価が存在するということになり、公的評価は破綻する。

個人的には、課税上必要な評価を適正時価とするなら、全てを統合する評価基準の作成が必要だと考える。

 それが無理なら、課税上の評価は適正な時価ではなく、課税目的に特化した方が良いと考える。

 不動産市場は目まぐるしく変化している。

他方、地方では、タダでも要らない不動産が増えている。
 取引がないので、時価の判断も困難となっている現在、改めて評価基準の統合を検討すべき時代にあると思う。

 第二次大戦のような結末を迎えないためにも、国家百年の大計を考える必要がある。

 2050年には、国土の20%から50%の地域が無居住化するとの報告もある。

 関係各方面の活発な議論を期待したい。

(2017年11月 月刊「不動産鑑定」傍目八目掲載/「評価基準の罪と罰」)

2022.05.26 13:15 | 固定リンク | 鑑定雑感

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