地方のことは地方へ ― 平均値の落とし穴 ~ Vol.3
2022.01.13
VOL.03 地方のことは地方へ

 高齢化の問題は、土地問題と同様に、団塊世代の去就の問題でもある。
 したがって、団塊世代の寿命と共に、自動的に解決されるものと予想しているが、少子化問題は国力に直結するので、100年単位の国のあり方を考える必要がある。

 たった40年前には人口が増えすぎるからと、産児制限を行なっていたのである。

 産児制限の政策効果を検証もせずに少子化問題を論ずる近視眼的な見方が社会を支配していることに、懸念を覚えずにはいられない。


 選挙の公約を見ても、とても100年後の日本の将来を想像することはできない。

 日本社会の上から下まで漂う「取り敢えず今日・明日が精一杯」という閉塞感には、絶望感を禁じ得ない。
 平均値をメルクマールとする思考・大衆社会に迎合する政治家、そして自分の利益しか考えない国民。
 佐藤優氏風に言えば、反知性主義に染まった日本の社会に、明るい未来はあるのか。

 参院選挙で問われるのは、政治家の見識だけではなく、国民の見識でもあると考える。

 少子高齢化と空家問題は別個の問題ではなく相互に関連している他、地方の事情は相当異なることから、日本全国共通の処方箋はないということを良く考える必要がある。

 暗い話が多くなったが、合計特殊出生率が2以上となるのは夢のまた夢と思われがちであるが、たまたま調査していたら合計特殊出生率が2.47という村があったので紹介する。

 この村は、北海道のオホーツク海に面する猿払村で、人口2,800人弱、高齢化率は22.4%である。合計特殊出生率が低いのは、ホタテの養殖という栽培漁業の成功によるものと思われる。

 尚、平成22年国勢調査によれば、全国一合計特殊出生率が高いのは鹿児島県の伊仙町で、2.81となっている。

 傾向としては、西高東低で、合計特殊出生率が2.0を超える上位30の市町村の大半は、九州(どういう訳か佐賀・大分・宮崎は入っていないが)と沖縄に集中しており、しかも長崎県の対馬市・壱岐市を除けば町村だけである。

 これらの状況から考えられるのは、地域の産業がしっかりしていれば、少子化は避けられるということである。

 少子化問題は、つまるところ地域経済の問題であるから、地域に密着した対策が必要である。

 その意味からも、地方のことは地方に任せるという大胆な地方分権が必要と思われる。
 
 あれから40年と言い訳をしないためにも、100年先を見通すリーダーが現れることを期待したい。

(2015年 傍目八目掲載/「空家の発生と三ない不動産の行方」)

2022.01.13 17:37 | 固定リンク | 鑑定雑感

- CafeLog -