空家の発生と三ない不動産の行方 ~ Vol.3
2021.10.21
VOL.03 固定資産税における土地評価と家屋評価について

 固定資産税における土地評価は、周知のとおり、地価公示価格等の7割とされている。
 田舎の土地は、時価で3,000円/㎡位のものも珍しくはない。

仮に公示価格等を基にした土地価格の時価を3,000円/㎡とし、土地の面積を200㎡とすると、固定資産税評価額は420,000円(3,000円/㎡×0.7×200㎡)となる。

固定資産税の標準税率は1.4%であるから、これによれば小規模住宅用地の固定資産税は980円/㎡(420,000円×1/6×1.4%)となる。これが6倍になっても5,880円(年額)である。
 
他方、家屋の評価額は耐用年数を満了しても、再調達価格(新築価格)の20%が打ち止めである。

 つまり、どんな古い建物であっても、壊れていない限り、新築した場合の建築費の20%で評価される。

 但し、実際の家屋評価額は、新築時の約50%位からスタートしているので、古家の評価額は、実際建築費の10%位と思われる。

 現地に行ってみると、修理するより取壊した方が良いような家屋でも、残価率20%(実際の建築費の10%)で評価されているのが多く見られる。

 仮に、土地面積を200㎡、建物の延床面積120㎡、実際の建築費150,000円/㎡、評価割合50%とし、耐用年数を満了した古家の固定資産税額を推定すると、次のとおりとなる。

150,000円/㎡×0.5×120㎡×20%=1,800,000円

 税率を1.4%とすると、家屋の固定資産税は25,200円(1,800,000円×1.4%)となる。
空家を取壊さなければ、土地・建物の税額は26,180円(980円+25,200円)となる。
建物を壊せば、土地の固定資産税が6倍になっても5,880円であるから、固定資産税の負担という点からみれば、壊した方が合理的である。

地価が安ければ建物を壊した方が税負担が軽くなるのであるから、土地の固定資産税額が6倍になるから空家対策が進まないというのは、詭弁ということになる。

 なお、このケースでいくと、土地の課税標準額が9,000円/㎡(評価額の6分の1)であれば、建物を取壊しても取壊さなくても、税負担に差が無い分岐点となる。

 つまり、課税標準額が6倍になっても、建物を取壊した方が税負担は軽くなり、これを超えると建物を取壊すと全体の税負担は増加する。

 したがって、空家のままの方が良いのは、この例では土地の適正時価が77,000円/㎡以上の市町村にある古家ということになる。

 (建物の税額25,200円÷200㎡÷1.4%÷0.7×6=77,000円/㎡)

 建物の固定資産税評価額を100万円とすれば、建物の取壊しの分岐点となる土地の適正時価は42,900円/㎡となる。
 
  建物評価額1,000,000円×1.4%=14,000円 ~ 税額

  14,000円÷200㎡÷1.4%÷0.7×6≒42,900円/㎡

 以上からみても分かるように、建物を壊せば固定資産税が6倍になると大騒ぎしても良いのは、前記の地価水準からみると、大都市及びその周辺市町村に限られるものと思われる。

建物の取壊しと、土地・建物の税額の相対的な税負担の大小は、土地・建物の評価額との関係で決まるのであり、土地の固定資産税だけを取り上げて大騒ぎするのは、愚の骨頂である。
2021.10.21 14:18 | 固定リンク | 鑑定雑感

- CafeLog -