不動産調査と役所の壁(法治国家日本の不思議) ~ Vol.6
2021.06.17
VOL.06 法治国家日本の不思議 

 法令上、閲覧規定を置いているにもかかわらず、キチンと見せようとしない。
 或いは、何の問題もないのに図面の交付をしようとしない等、現場における役所の対応は様々である。

 筆者の経験で、役場の税務課で、所管している地番図の写しの交付を拒絶されたことがある。

 その理由が、何と写しを交付したことがない・正確ではないというもので、どうしても必要ならトレースして行けということであった。

 筆者も頭に来て、交付したことがないものは交付しないという条例はあるのか、固定資産評価をそんな不正確な図面でやっておいて良くも適正な評価と言えるなと窓口で毒づいたが、ダメであった。

 公務員は法律に基づいて行動せよと法律上要請されているのに、やったことがない!言われたことがない!等と、およそ法令に根拠のない理由で情報を出さないことが多い。

 特に、個人情報保護法ができてからは酷くなっている。

 傑作なのは、空中写真を個人情報だからダメだという言い訳であった。

 個人情報保護法の拡大解釈もここに極まれりということである。
 この法律を作った学者・政治家・官僚の思考程度を疑う他はない。
 こんなデタラメな解釈がまかり通っている国が、近代国家だとは到底認めることはできない。

 更に酷いのは、法令に根拠があっても、対応した経験がなければ、見たことがない・聞いたことがない・やったことがない等と、調査を拒絶することである。

 どうやらこの国の行政機関にとって、経験がないこということは憲法にも優先する行為規範らしく、未体験の国民の要請には一切対応しないという明治以来の官尊民卑の伝統が未だに深く根づいているようである。
 
 国民主権の近代民主主義国家を標榜しながら、市民対応レベルでは北朝鮮並みの非民主的対応に終始しているのは、国家的サギである。

 情報を公開し、情報を共有することによって問題点を共有し、あるべき民主主義国家に向かって進むべきものと考えるが、行政情報のミス・失敗等を隠蔽する為に情報公開を渋っている姿は、まるで第二次世界大戦末期の軍部や、旧社会保険庁等と同じである。

 国民の人の良さにもほとほと呆れる他はない。
 
 いずれにしても、役所調査の長い経験からみると、役所ほど法令を守らないところはないということである。

 特に、組織防衛の問題がからむと情報を遮断し、都合の良い拡大解釈・類推解釈が横行する。
 そこには国民主権の視点は全くないのである。

 日本が真の民主主義国家となり、真の法治国家となるのは夢の又夢なのであろうか。

 日々行政対応の矛盾を感じつつボヤいているうちに、年をとってしまった。

 一部過激な表現があるが、これも先の短いシルバー世代の戯れ言と、ご容赦を願うものである。

(2010年11月 Evaluation no.39掲載/「不動産調査と役所の壁 ― 法治国家日本の不思議」)

2021.06.17 12:04 | 固定リンク | 鑑定雑感

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