不動産調査と役所の壁(法治国家日本の不思議) ~ Vol.5
2021.06.10
VOL.05 不動産調査と役所の壁 

 不動産鑑定士に特別の調査権がある訳ではないが、それ以外にも役所には高い壁がある。

 例えば、建築基準法第93条の2には書類の閲覧規定があり、

『確認その他の建築基準法令の規定による報告に関する書類のうち、当該処分若しくは報告に係る建築物若しくは建築物の敷地の所有者・管理者若しくは占有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして国土交通省令で定めるものについては、国土交通省令で定めるところにより、閲覧の請求があった場合には、これを閲覧させなければならない。』

としている。


しかし、実際の運用状況をみると、役所によってその対応はバラバラである。


 つまり、文字どおり見せるだけの役所もあれば、建築計画概要書の写しを交付してくれる役所もある。
 更に、情報公開条例で請求してくれれば、写しを交付するという所もある。


 ところで、不動産の調査で、道路の調査は基本中の基本である。

 道路法第28条では、道路台帳(図面を含む)の整備を義務づけ、道路管理者は道路台帳の閲覧を求められた場合においては、これを拒むことができないとしている。

 これについても役所の対応はバラバラである。

 国道・都道府県道については、閲覧・図面の写しの交付も含めて十分な対応がなされているようである。

 しかし、これが市町村道となると、その対応は極端である。

 国道管理者と同様の対応をしている市町村もあれば、正確ではない、個人情報の記載があるとか言ってチラッとしか見せてくれない市町村もある。

 これ以外にも、不動産に関する行政法規の中に閲覧規定を置いている法令は多いが、その対応の有様は市町村の数だけあるのである。

 役所は税金で多種・多様な調査や図面を作成しているが、法令上その扱いがハッキリしないことを盾に見せようとしないが、近代民主主義国家における行政の対応として如何なものかと、一人嘆息している。
2021.06.10 19:47 | 固定リンク | 鑑定雑感

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