競争入札と不動産鑑定士の市場価値 ~ ニュープアーへの途 ~ Vol.2
2021.01.21
VOL.02 資格業とその市場価値 

 資格業とその収入の統計は見当たらない。
 したがって、資格業の懐具合を横断的に比較検討することはできない。

 以下の記述は限られた情報と断片的な記憶によるものであり、正確ではないことをお断りしておく。

 読者の皆様もご存知かと思うが、司法修習を修了したばかりの弁護士の初任給(年収)は、 300万円~ 400万円位、良くて 600万円位らしい。

 人事院による平成20年の民間給与の実態調査に拠れば、前記の収入は低い方で大学院の修士課程修了の事務職の初任給程度、高い方で新卒医師の初任給程度であるので、弁護士の初任給が不当に安い訳ではなさそうである。

 そうは言っても、超難関試験を合格しているのであるから、大学院博士課程修了並みの初任給は出しても良さそうであるが、採用する事務所側としては、教育をすればする程将来の有力なライバルを育てるようなものであり、また、事務所特有のノウハウも流出するとなれば、採用は嫌が上でも慎重にならざるを得ないのも理解できる。

 他の資格業である、司法書士・土地家屋調査士・行政書士・社会保険労務士、或いは公認会計士・税理士等については、この種の話はあまり話題にはならないが、仄聞するところによれば、相当悲惨らしい。
 これらの職種では、月10万円の収入がやっとという人もいるらしい。
 もっとも、資格を取得したら後は何もしなくても自動的に仕事が来る訳ではないので、人付き合いの苦手な人は、どの業界においてもやはり商売としては難しいのではないかと思われる。

 不動産鑑定士の世界はどうかと言えば、弁護士以外の資格者と同じく、特別良い方ではなさそうである。
 ただ、他の資格者と決定的に異なるのが、地価公示のような公的評価があるため、特に営業努力をしなくてもある程度の収入の途が用意されていることである。
 このことは、他の資格者から見ればまさに垂涎の的である。
 公的にいろいろな仕事が用意されているため、ともすれば他の資格者団体から羨ましがられたり、他士業との境界領域にある業務については、解放を迫られるのも致し方のないことである。

 この親方日の丸的な、謂わばパラサイト的体質が、不動産鑑定業界の自立的発展を阻害しているのではないかと危惧している。

 いずれにしても、資格業の市場価値は収入の大小に具体的に現れるのであるから、規制改革以後、受験制限のない国家資格者の市場価値は、著しく低下したのは確かなようである。
2021.01.21 13:57 | 固定リンク | 鑑定雑感

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