フラクタル現象とエレベーター相場 Vol.3
2020.12.03
VOL.03 時点修正とエスカレーター相場 

鑑定評価基準によれば、時点修正とは「取引事例等の取引時点が価格時点と異なることにより、その間に価格水準・賃料水準・建設費等に変動があると認められた場合には、当該取引事例等の価格等を価格時点の価格等に修正すること」であるとされている。

そして時点修正は、「取引事例・収益事例・建設事例等について、それぞれ豊富に収集した価格形成要因の推移・動向等を総合的に勘案して行うことが必要である。」 とされている。

思想としてはある程度理解出来るものの、実際問題としては手に余る作業と思っている。

データの大量観察ができる株式市場ですら先が読めないのである。

それに引き替え、不動産市場ではデータの不足は恒常的であり、しかもデータの偏在が著しいのである。

このような条件下で時系列的に分析せよと言われても、神ならぬ人の身となれば、分析にも限界があるのは当然である。

しかも、不動産市場が一部とはいえ証券化され、株式と同様に売買され、その資金がさらに市場に投入されるという状況下では、相場の行方を的確に把握することは困難である。
そんなことができるのであれば、既に一財産をなし、ハッピーリタイアも夢ではなくなる。

また、同一地方都市内でも地価の動きは異なっており、道路一本隔てただけで変動率が変わる等ということをどう理解して良いか、ボンクラの筆者には見当がつかないのである。

また、何時の時点から上がったのか、下がったのかを判定することは、更に困難である。

かつて訴訟鑑定の証人尋問で、相手側弁護士から時点修正をしているが何月何日から変動したのかと聞かれ、返答に詰まったことを記憶している。

時点修正が完璧にできるのならば、一度鑑定した物件について再鑑定は不要となる。

また、要因があって価格が決まるのなら、要因の確定を深化させれば良いことになる。

やがてその研究が高度化すると、要因と時点修正率の関係も説明できるようになるものと考える。

しかし、大量のデータが入手可能な株式市場や外為市場でさえ、一瞬先は闇である。

不動産のようにデータの絶対量が少なく、しかも不透明でかつバイアスが大きい市場の特性を考えると、時点修正は至難の業と思わざるを得ない。

ところで、昨今、不動産市場は急速に悪化しつつあり、二桁マイナスも予想される中で、比準価格の大半が時点修正で決まるということも考えられる。

つまり、時点修正率が20~30%位あるのに、地域格差を数パーセントの範囲で説明したところで、あまり意味がないと考える他はない。

まして、急激な変化が生じた時、その時が地価水準の変化点だと言い切ることはできない。20数年鑑定世界に身を置いているが、時点修正の判定は、今もって自信のない世界である。
 
2020.12.03 15:26 | 固定リンク | 鑑定雑感

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