DCF法はアートな世界? Vol.2
2020.07.09
VOL.02 DCF法による価格と直接法による収益価格の違い 

 DCF法は収益価格の一類型に位置づけられているが、個人的には何かしら怪しさを感じる。

 何故なら、保有期間(分析期間)が短ければ求められる価格の7~8割は直接還元価格の復帰価格であり、純粋にキャッシュフローで説明できるのはたかが2~3割にすぎないからである。

 長期の保有期間(10年前後か)を想定すればその割合は半々位なると思われるが、それでも約半分しか説明できない。
 証券化不動産の評価においてはDC法の適用は必須であるが、証券化不動産の評価という仕事はまず個人事務所に依頼があることはないと断言できる。
 仮に依頼があったとしても、10年間の保有期間のキャッシュフローのシナリオを完璧に作ることはできない。
 予測の原則があるといってもせいぜい2~3年が関の山である。

 この激しい時代変化の中で、一体誰が10年間のキャッシュフローを作成することができるのであろうか。
 1年先も読めない私には、人間離れした神業としか思えない。
 不動産鑑定士に依頼すれば、少なくとも10年間は絶対に倒産・破産しない不動産経営ができるのであろうか。
 10年間のキャッシュフローを予測し、それが適正だと言い切れるのなら、多額の費用と時間をかけて華々しく発表される、各シンクタンクの我が国の一年先の経済成長率の予測は百発百中でなければならないことになる。
 
 しかしこれまで、経済成長率の予測が当ったことはないのである。

 たかが一人の鑑定士が限られた費用と時間と資料の制約の中で10年先のキャッシュフローを作り上げるというのであるのだから、ただただ恐れ入るばかりである。

 私には神をも畏れぬ所業としか思えない。


2020.07.09 09:50 | 固定リンク | 鑑定雑感

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