ホモ・エコノミクスとゴルゴ13 Vol.1
2013.04.04
VOL.01 鑑定理論と不動産取引の現場

 鑑定理論の基本的な考え方は、標準的な経済学を基礎としている。
 不動産は経済財であるから、その価格形成は市場原理に委ねられていることになる。
 市場における経済の動向を分析し、市場における行動心理を理論化したのが経済学であると私は理解している。

 標準的な経済学では、市場における人間の行動は完全に合理的であると仮定した上で複雑に絡み合う経済行動を抽象化して理論が組み立てられている。

 また、一般的に一定の条件の制約下における経済行動の分析が静態的分析、一定の条件が変動することを前提にした分析が動態的分析である。

 鑑定理論はどちらかというと、完全市場における市場条件が一定、つまりある条件下における経済合理性に基づく経済人の行動を前提に理論が構築されているものと理解される。
 つまり、静態的分析の上に理論が構築されているため、現実の市場に立ち向かうと違和感を覚えることになる。

 不動産取引の現場は極めて不完全でダイナミックに変動する市場であり、取引情報の非開示性や経済合理性に基づかない、すなわち主観的な事情に基づく取引が多く、静態論的経済学を基礎とする鑑定理論をもって現実の不動産市場を説明することは相当困難な作業となる。

 我々は不動産の完全市場を現実に見たことはない。
 したがって、現実の不完全市場が完全市場とどの程度遊離してるかということを身をもって感知することはできない。

 何時の日か仮想世界でもいいから不動産の完全市場がどういうものかを見たいものである。
2013.04.04 09:24 | 固定リンク | 鑑定雑感

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